岡田拓朗

パターソンの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.2
パターソン(Paterson)

毎日が、新しい。

物凄くよかった。
見方や捉え方次第で日常は全然違ったように見えることが、パターソンを軸に優しく温かみのある形で描かれていて愛おしい。
一見変わり映えのない日常の繰り返しは、実は毎日が新しい。
そこに気付けるかどうかで、人生の豊かさは変わっていくことに気づかせてくれた。
でもそこに気づくことができるのは、あらゆることに関して敏感にならないと難しい。

日常の中の思いがけない出会い。
いや思いがけずというまでもなく、日常こそが個性を作っているのかもしれない。
個性とは他の人と違ったその人特有の性質や性格であり、それは見えているもの、感じるもの、触れるものから作られていく。

パターソンの日常は、朝起きて、バスを運転して、愛犬を散歩して、バーに行って、人と出会って、妻と眠る。そしてたまに綴る。
そんな変わらない日常。でも、毎日は新しい。
それはパターソンが日常に起こることにおいて敏感であるからに他ならない。

とにかくパターソンの感受性が豊かであるから、日常の中にある気づかない日々の奥行きを同じように感じることができる。
日々の細かい出来事を見落とさずに、拾って自分のものにしていくスタンスがとても素敵で、参考にしたいなと思った。
そう言うとパターソンが主体的にそれをしているように聞こえるから語弊があるかもしれないが、彼はそれを日常の営みとして自然に行っているように見える。

自分には関係のないと思っていたことから、人の広がりは作られていく。
いかに関係のないものに触れて、それを自分を司る一つのものとして受け入れられるかが、人生を豊かにしていく第一歩ではないだろうか。

そういう意味で、改めて何気ない日常の尊さに気づかせてくれる。
それが無駄に感じられてしまうことがあるのは、あまりにも目的的に、意味のある日々を過ごそうとし過ぎているからなのかもしれない。

積み上げてきたものをなくしたとしても、また新しい毎日は始まり、そこから積み上げていけるものがある。
白紙だからこそ描くことができる(真っ白になったからこそ見える)ものがあるだろう。

自分の思い通りにコトが進まなかったとしても、それはそのときと順応しながらそれすらも自分を作るものとしてポジティブに受け入れていくのが素敵で、ここまでそれを体現するのは真似しようとしてもなかなか難しいことなんじゃないかと思う。

日常を特別なものとして綺麗に描く作品はやっぱり好きだ。
河瀬直美監督や中川龍太郎監督の作品が好きな方には特におすすめしたい。

P.S.
マリッジ・ストーリーのときとは全然違う穏やかなアダムドライバー。
そして日本版のポスターがめっちゃいいなーと思った。
同じ寝てるでもこれだけ違うんですよね!
この絵がこの映画の全てを表してると言っても過言ではない。
そしてちゃっかり永瀬正敏出てたのがびっくりでなんか嬉しかった!
岡田拓朗

岡田拓朗