arch

まあだだよのarchのレビュー・感想・評価

まあだだよ(1993年製作の映画)
4.0
『まあだだよ』
黒澤明監督生活50周年30本目、遺作。黒澤明の代表する中期のアクション時代劇とはかけ離れた作風、そう思い出すのは初期作品群の『素晴らしき日曜日』『酔いどれ天使』『野良犬』等の戦後を描いた作品達で回顧と郷愁、初期に思いを馳せさせる作品になっていた。

全体的にやはり行き過ぎな人格者表現、今ではリアルとは言い難い恩師と生徒の関係。黒澤明はもう行くとこまで行って、こういった作品しか作れない域にまでたどり着いてしまった感がある。
先生の姿は「良き行いをしてきた人間は当然、人に慕われ幸福な最後を迎えられるべき」という黒澤の願望の具現化した存在で、そこに始まり全てが歪な黒澤フィルターに掛けられた要素で埋め尽くされている。それをつまらんとするかは各々に任せるが、ここまで来てしまえば天晴れだ。

まるでお別れ会のような作品、そんな意図はないだろうが遺作のための作品にしか思えないのだ。
arch

arch