N4M30V3R

まあだだよのN4M30V3Rのレビュー・感想・評価

まあだだよ(1993年製作の映画)
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内田百閒も摩阿陀会も黒澤明も「まあだだよ」も知ってたのに、何故か「まあだだよ」が百閒のことを扱った映画だとは知らなかった。黒澤が晩年の自分を百閒に重ねたというよりも、戦中ないしは敗戦国としての戦後(苦境)を乗り越えた人々の強さとは、悲壮感や使命感や質素や高度経済成長期の体育会的なマッチョイズムではなく、ユーモアや師弟或いは同窓同志の暖かい関係性だったのではないかという想いを作品に残してこの世を去ったのではないかという気がした。神経を研ぎ澄ましたテーマやカットアップは見受けられないが、少し腰掛けて居続けたくなるような愛しい時間が流れている。ラストは美しい。猫の下りも(百閒が愛猫家であることを示したり漱石のことを彷彿させる以外は)無くても良さそうなものだが、ペットは愚か幼児(や自分以外の人種)ですら虐待する現代人が対象的に見えるあたり狙いが効いていたのかもしてない。悪戯電話に表現された歪んだ魂は差し詰め今日のネットやSNSだろう。
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