さむ

新宿スワンIIのさむのレビュー・感想・評価

新宿スワンII(2016年製作の映画)
3.0
公開初日に鑑賞する客は、大概が出演者のファンであることが多いので、このところ、初日を避けて映画を観るのが習慣になっている。やはり初日は、客席の反応も相当な贔屓目があって、「静かなる黄色い歓声」が空気感から伝わってくる。それが何よりも鬱陶しいと感じてしまう今日このごろ。

初日と違い、日曜日の昼間という時間帯は、客の反応が世間一般大多数のものに近いと思う。

広瀬アリスのダンスシーンは、試写会では否定的な感想が多かったようだけど、あれはよかったと思う。あの世界に働く女性の哀しさを体現したのではないか。あのシーンでは客席のあちこちから洟をすする音が聞こえた。

新宿スワンの世界観では、論理ではなく感情が人を動かしている。男の勝負は金と暴力でカタをつけ、女の勝負は男を見抜く眼力にかかっている。強い男についていく女が勝ちなのだ。

水島力也名義の山本氏がどうしても描きたかった「新宿」という街を、苦しみつつもエンタメ性溢れる作品に映像化したことは心から賞賛したい。

かつて、彼に近い同業者の方が呟いていたけれど、新宿スワンは水島氏がどうしても作らなければいけなかった映画なのだ。自分を信じきれる男。使命感をもってあの世界観を作り上げたことに、ただただひたすら感服した。

当然ながら、「新宿スワンⅢ」も近いうちに制作に取り掛かるのだろう。原作通りに完結させるとすれば、やはり最後にはあの人に登場してもらい、美しく華麗に羽を広げて羽ばたくところで完結してほしいと思う。
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