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園子温という生きもののjiroのレビュー・感想・評価

園子温という生きもの(2016年製作の映画)
3.5
ぶっ飛んでいて常人に理解出来ないのは、園子温という別の生きものが作り出すものだから。
そのことがよく分かった。
映画監督以前に、理解されようがされまいが、己の表現にこだわる1人のアーティストである。

映画ではなく少し長めのドキュメンタリーで、基本的には酒を片手にという自由奔放ぶり。笑
突拍子もなく思いついたことをその場で指示するから、周りのスタッフや役者は大変だろうな〜笑
ただ二階堂ふみさんも言ってたようにお父さんのような愛くるしさも分かる気がする。

ヒミズの事が触れられていて、染谷君の「この作品に関わる事で共犯者になる」というコメントがとても印象に残っていて、彼の園子温へのリスペクトが感じられた。染谷くんと二階堂ふみさんの台本読み合わせ中に眠ってしまったというエピソードもまたぶっ飛んでいた。笑

しかし彼の文集や学生時代に書いていた映画ノートを見ると、若い頃から只者ではなかったことがよく分かるし、映画への強い思いがひしひしと伝わってきた。

この映画で一番伝えたかったのは、映画やアートは枠に囚われず、グローバルなものであるべきだという事だと思う。園子温はいわゆるG人材である。僕は好きだった『舟を編む』をありきたりなタッチで描いた作品だとdisっていたけど、たしかに日本人にしか評価されない作品ではあるだろうし、国内の枠に囚われているのは事実かもしれない。そんな舟を編むがアカデミー賞を受賞し高く評価されている事をを踏まえると、日本映画に警鐘を鳴らしているとも言える。今の日本映画はアイドルやモデルが片手間に俳優をして、映画が出たら各局で番宣をして、脚本で勝負せず話題性で勝負しているのが多いみたいな批判を過去におっしゃっていましたが、この点についてはよく分かるし、鑑賞者側も映画を「見る目」を鍛えないといけないですね。
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