マヒロ

ジュリエッタのマヒロのレビュー・感想・評価

ジュリエッタ(2016年製作の映画)
3.5
恋人と暮らす中年女性のジュリエッタは、娘の旧友と街中で偶然再会し、十数年前に姿を消したきり絶縁状態になっていた娘のアンティアを見かけたと聞かされる。たまらず恋人との引越しまで取りやめてまでアンティアに向けた手紙を書き始めたジュリエッタは、今まで隠してきたことを話すとして過去の出来事を思い返していく……というお話。

『オール・アバウト・マイ・マザー』や『ボルベール』なんかの他のアルモドバル監督作品と同じく「母」の物語。
回想という体をとりながら夫であるショアンとの出会いと蜜月、ショアンの家の家政婦や彼の友人であるアバとの関係、そして娘のアンティアの誕生と人生における挫折などが描かれていく。
前述の二作における母は、自らの運命を受け入れて生き抜く強い母という感じのキャラクターだったけど、今作のジュリエッタは運命に翻弄されながら傷つき打ちのめされながら生きていくような人であり、悲劇的な側面が強いように感じた。鮮やかで情熱的な色使いの中にあるナイーブな感情が、今まで観た他の作品には無いような印象があったかも。

あくまで今作でこちらが見せられる話はジュリエッタの目線でしか描かれることはなく、娘のアンティアの葛藤みたいなものは見えてこない。物語上アンティアにも相当なドラマがあるはずなんだけど、そこは別視点として描かれることはなくて、こちらの想像に委ねられている感じ。恐らく描いたらそれだけ面白くなるように思えるんだけど、あえてそこを欠落させることでジュリエッタと同じ寄り添った目線を持つことが出来て良かった。

(2020.192)
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