劇場公開時の評判が芳しくなかったが、やはりスクリーンで観るべきだった。
確かピカデリーで上映されていたと思うがワーナー配給作品という事で、いつもの変態性は排除され、母娘にとっての時間や変化が丁寧に描かれる。
通常のアルモドバル作品よりも屋外の描写が多く、澄んだ空気が匂い立つかのよう。
お得意の色使いはいつものごとく。
画面を見てるだけで飽きない。
”物事は私に関係なく進んだ”
夫を失ってから、娘とその親友とひと時を過ごすジュリエッタが漏らす言葉。
気持ちのすれ違いや時の流れの残酷さが静かに浮かび上がる。
アルモドバル作品に必ず見られる時間の巻き戻しや早送りのテロップが無い。
ジュリエッタの老いや娘の成長が、唐突だが自然に描かれており、新境地と言えるかもしれない。
ふとガラスに映った自分の姿に違和感を感じる事
は誰でもあるだろう。
録音された自分の声の気持ちの悪さ。
主観的な自分の人生と、客観的に他者の目に映る一瞬が、同じとはとても思えなくても、それが現実だ。
男は人生の添え物でしか無いのが侘しいが、こうあるべきとも感じさせる描き方に静かに共感し、エンディングの美しさに、胸のつっかえが少し消えた気がした。
電車と並走する🦌が恐ろしく美しい。