えんさん

イエスタデイのえんさんのレビュー・感想・評価

イエスタデイ(2014年製作の映画)
2.5

1967年、ノルウェーの首都オスロに住む高校生セブ、グンナー、オーラ、キムの4人組。大人気バンド『ビートルズ』のメンバーに自分たちを重ね、恋に冒険に熱中していた。その中で、ポール・マッカトニーの髪型に似ているキムは、ある日、映画館で見ず知らずの女の子にキスされる。それ以来、キムはその女の子のことが頭から離れない。彼女に向けて架空のラブレターを書いていたが、クラスに転校していた女の子にも気が向こうとしていた。もやもやとした日々が続く中、4人は、『ビートルズ』に憧れてバンドを結成する。ノルウェーを代表する作家ラーシュ・ソービエ・クリステンセンの小説を基にした青春ドラマ。監督はペーテル・フリント。

誰しもが青春時代に流れていた曲が頭から離れないということがあるでしょう。僕の場合は世代的にミスチルやGLAY、スピッツあたりになるのですけど、バンドの曲は聞いていたものの、この映画の4人の高校生たちみたいにそのバンドのメンバーに憧れたり、彼らの姿に自分を重ねるなんてほどまではハマらなかったかなと思います。無論、僕ら世代でもバンドに憧れをもっている人はいたでしょうが、生活のスタイルまで浸透するということになると、やはり”ビートルズ”という1つのバンドでありながら、世界のカルチャーを変えた偉大さみたいなものに感服をせざるを得ません。映画作品としても、彼ら4人の姿がビートルズのライブシーンに重なっていくようなところがあったり、それでなくでも様々な場面でビートルズの音楽が溢れていて、ビートルズ好きにはたまらないビートルズ漬けになれる作品だと思います。

ただ、この映画、これだけビートルズにオマージュを捧げているものの(原題は「ビートルズ」というそのままだったりと)、音楽映画になっていかないんですよね。4人組たちはバンドを結成し、ラストでそのバンドが曲を披露しようとするところがあるんですが、それもほろ苦いものに終わらせてしまうなど、全体的にグダグダっとした感じにしかまとめていかないのです。主人公のキムも含め、恋に、バンドに、元気で若々しい部分も描きながら、そこで大人との距離感の間でほろ苦い部分を織り交ぜたりと、青春映画としては一通りの要素を兼ね備えているんですが、同じようなバンド映画で昨年観た「シングストリート 未来へのうた」と違って、映画らしいマジックがかからないし、何か彼らの未来に対するドライブ感というのも感じられないのが少々残念な作品だったかなと思います。