TAK44マグナム

アナイアレイション -全滅領域-のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.2
人類は全滅するしかない。


アレックス・ガーランド監督がジェフ・バンダミアのガチガチなSF小説をナタリー・ポートマン主演で映画化したもの。
日本ではNetflixの独占配信という形で公開中であります。


元軍人で現在は生物学者のレナ(ナタリー・ポートマン)は、一年以上も音沙汰のない夫の帰りを待っています。
彼も軍人であり、秘密任務に就いているのです。
しかし、いつまでたっても連絡がつかず、軍に問い合わせてもなしのつぶて。
夫の生存を諦めかけていた頃、突然、彼が目の前に現れます。
事情を聞こうとしていると、二人は政府組織によって連行されてしまい、レナは夫が多臓器不全で瀕死の状態だと知ります。
そして、秘密任務が、数年前に突如として出現した「シマー」と呼ばれる異空間の調査であったことも判明、そこに夫の命を救う手立てがあるかもしれないと考えたレナは、女性だけで構成された調査隊に志願するのでした。
はたして、拡張を続ける「シマー」とは何なのか?
虹彩に閉ざされた異空間で、一体何が待ち受けているというのでしょうか・・・?


お話の構成としては、どうやらただ一人シマーから生還したらしいレナが尋問されており、彼女の話す回想シーンによってシマー内部の驚くべき状況が露わになってゆくというスタイルをとっています。

シマー内部では動植物全てのDNAが「反射」し、変異や融合を経て、新たなる生物へと劇的な変化を遂げていることが判明します。
凶暴なワニやクマの襲撃を受けますが、これらもまた、歯の並びがサメの様になっていたり、調査隊員を食らった結果、彼女の声を発するようになっていたりと、信じられない変化を遂げていたのです。
木や花もヒトガタに育ったり、異様な光景がそこには広がっていました。
いつしかレナたちのDNAも影響を受け始め、ついにたどり着いた領域の中心となる「灯台」で、レナは衝撃的な事実を知ることとなります。

異世界でのサバイバルという内容に間違いはありませんでしたが、観る前に想像していたものとは全く違っていました。
未知のモンスターやエイリアンとのバトルや冒険活劇ではなく、登場人物(特にレナ)の内面の揺れ動きを描く物語でした。
勿論、人類の変革や進化などのSF的アプローチは重要なファクターですし、猛獣、そしてクライマックスに登場する「何か」との凄惨な戦いも描かれますが、常にレナの視点で語られるパーソナルな物語となっております。

結局のところ、「シマー」について謎が明かされるわけでもなく、何が何だか狐につままれたような感覚をおぼえたわけですが、特にラストの解釈は観た者それぞれで違ってくるのではないでしょうか?
夫の身に何が起きたのかは分かります。
問題はレナの方です。
「灯台」で接触した謎の物体は、たぶんテラフォーミング用のコンピューター機器みたいなものだと思うのですが、レナのDNAを反射して生まれた「アレ」の最後の行動は一体どういう意味だったのか?
本当のところ、レナはどうなってしまったのか?

個人的には、レナたちから、ある種の進化が始まるのではないかと想像した次第ですけれど、どうにも一筋縄ではいかない不可思議なトーンで彩られた映画でした。

「シマー」、それは希望なのか、絶望なのか。
美しき虹彩は黙して語らず、観た者に想像の余地を残すミステリアスでファジーな一作。
SF好きで尚且つスッキリしなくても大丈夫な方向けかと思われます。


NETFLIXにて