ウサミ

アナイアレイション -全滅領域-のウサミのレビュー・感想・評価

4.2
あまりに非現実的な世界を描きながら、そこにリアルな人間の倫理観や価値観を交え、謎をばら撒き、観客に問いかけてくる。
グロテスクな映像と美しい映像を交え、フィクションに息づくリアリティを与えるというのが非常に魅力的で、夢中になってしまった。
というのも、『分からなくて当然』と感じられるような空気感があるように思えた。分からないことだらけ、分かることなんてほとんど無いながら、それを楽しむことができた。

絶対ありえないのに、ありえるかもしれない

この矛盾した親近感こそがSFの魅力のように思える。

突如現れた謎の領域“エリアx”。
ここに5人の女性が調査隊として派遣される。
ここに住む生物たちは独自の変異を起こしている。人間の腹の中で動き回り大きくなり突き破る生物、人間の形をした植物、そして1番気持ち悪いのが、人間の声を真似るクマ。
“Help me!!”
って言いながら襲ってくる。全編が悪夢のような映画だった。

しかし、そのぶっ飛んだ世界観から、人間の「自己破壊」的な欲望や、アイデンティティの居所といった、哲学的、そして多くのSF映画で描かれるようなテーマが浮かび上がってくるのが素晴らしい。
残酷でグロテスクな映像と普遍的な人間ドラマが、妙なリアリティを醸し出す。

一体なんだったんだ?この映画。
考えても分からないけど、この分からなさがたまらない。
美術、演出といった部分でも非常に見応えのある作品。

人をかなり選ぶと思うけど、SF映画が好きなら多分ハマる。
ウサミ

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