So

アナイアレイション -全滅領域-のSoのレビュー・感想・評価

3.4
非常に独特な世界観でアーティスティックに作られたSF映画でした。
大まかなストーリー筋は単純なので、それに即して観ていけば雑な理解としては話を追えますが、この映画で表現したいものが非常に観念的なので、そこを追おうとするとわりと難しい解釈が求められます。

主人公レナ(ナタリー・ポートマン)は生物学者。序盤で彼女の口から語られる細胞分化の理。「宇宙におけるすべての生命体はたった一つの細胞から端を発した」という大学講義で、「さて次はガン細胞について学びましょう」というところで生物学者としての彼女を紹介するシーケンスは終わります。ここでまず観る側に何かのフラグを立てさせられ。

死んだはずの夫が突然帰宅してきて、細胞というワードから「これはクローンか?」などというまた別のフラグが立ち。

わりと強引な展開で、地球外生命体が降臨したという隔絶地「エリアX」へと運ばれるレナ。そこで夫がその「エリアX」の調査隊の唯一の生還者だったことを知ります。レナもまたその謎を解く調査隊の一員となり、謎めく根源へと向かいます。このあたりの心情の流れは超絶に雑です(笑)

「エリアX」の中心地となるエイリアンが降臨したポイントへ到着するまでの「何?どういうこと?え、なんなの?」という謎への興味の引き方はなかなかのものでした。
所々で生物学者の見識として語られる生物の有りようが、この映画の観念的メッセージを解くヒントとなっていくところも面白かったです。例えば、属をまたぐ種の交配はできない、とか。

その理を逸脱し、属を超えて生命が同化している姿をビジュアル化した動植物はグロテスクであり神秘的ですらありました。細胞分化に限界があるという(=老化であり死)生命の絶対的なルールすら何かの恣意的な制限装置だとするなら、その歯止めを解除した生命の有りようはどうなるのだろう。何かすごいことが待ち受けている期待感に前のめりになって引きつけられました。

そしてまた、あくまでエイリアンと人類との対比で進むと思っていたら、まさかの「レナの不貞による夫への罪悪感」という、SFにはあまりない生々しい人間関係のもつれという横槍を入れてきます。「私のせいで夫が、、、」主人公は清廉潔白ではなく、ある背徳感をもって夫の痕跡を辿っていたのです。これは映画全体としての解釈にどう組み込めばいいのかまだ附に落ち切っていないところです。

蘇った夫の真相、エイリアンとの遭遇のシーケンスは、観念論を映像化したとしか言えないエキセントリックそのもの。
よくできている、とも言いませんし、なんだこれ?とも思いませんでした。古臭い描写や映像技術はこの際置いといて、この不可思議な存在や細胞から分化しその過程こそが自分と他者を決定づけるということへのアンチテーゼが垣間見れるシーケンスでした。

やっぱりこういう映画は僕程度の語彙力ではうまく言語化できません😅他の方の分かりやすいレビューで納得させていただくことにします!
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