えんさん

SING/シングのえんさんのレビュー・感想・評価

SING/シング(2016年製作の映画)
3.5
字幕版にて。

動物だけが暮らす世界。かつては繁盛していたものの、今や客足は途絶え、取り壊し寸前の劇場の支配人バスターは、かつての栄光を取り戻すため歌のオーディションを開催する。手持ちの資金は僅かであったが、作ったチラシの誤植も手伝って、個性的な動物たちが会場に集まってくる。その中には、貪欲な自己チューのハツカネズミもいれば、25人の子豚の世話に毎日を追われて疲れた主婦や、ギャングファミリーを抜け出す夢をもっているゴリラ、横柄な彼氏と組んでいるデュオに不満を持っているハツカネズミ、家族の前では絶世の歌声を聴かせるものの人前に出ることが出来ない象、常に陽気な豚もいた。彼らの夢は賞金以上に、劇場にかつての輝きを取り戻すようなエンタテイメント性を秘めていた。。「ミニオンズ」「ペット」を生んだユニバーサル・スタジオ&イルミネーションによるシング&アニメーション。監督・脚本は「リトル・ランボーズ」のガース・ジェニングス。

「ペット」と同じくイルミネーションのアニメーション映画はかなり前から予告編を展開し、期待をふくらませるのが上手い(笑)。本作は歌が重要な要素になっているだけに、いろいろ流れるキャラクターたちの歌の断片が予告編で耳に焼き付いているので(まぁ、それだけ劇場で予告編を観すぎているからかもしれないですが、、)、これがアニメとして全編流れるとどんな感じになるのだろうという期待膨らむ鑑賞でしたが、その期待は120%満足させてくれる作品になっています。お話としては、まぁ傾きかけた劇場を復活させるべく仕掛けた劇場支配人の夢が、それぞれが一芸はもっているものの、日常の中でどこかそれを発揮することができずにいた各キャラクターたちが、自分たちを開放しつつ、劇場を復活させる方向に動いていく、、というありがちなものになっています。なので、ラストが大団円となるコンサートシーンになるわけですが、このグルーブ感がとにかく凄い。所詮アニメのキャラクターがやっていることとは分かるのですが、スクリーンを通して、観客とアニメのキャラが一体となっていくような感覚は、まさに映画館だからこそ味わえるものだと僕は思います。

それに「ペット」や「ミニオンズ」のイルミネーションが上手いのは、複数のキャラクターがいて、それぞれが物語をもって流れていても、1つの作品の中でとても見通しが良い構成になっているのです。とにかくテンポ感がいいのは「ペット」に共通していることなのですが、その中で、夢を実現していくというアメリカン・ドリームならぬ、アニマル・ドリーム的なことがシンプルに貫かれているのが、うまくこちらの気持ちを高揚させてくれる鍵になっています。僕は、中でも主役級になっているコアラの試合人バスターが非常にいいなーと思います。存在感としては弱々しいんですが、劇場をこうしていきたいという夢を大きく持ち、不器用ながらもそれに前向きに進んでいく姿がいいんです。映画の中盤で、その夢は一旦文字通り粉々になるわけですが、彼の仕掛けてきた裏方としての仕事っぷりが、各アーティストの心を動かしていくのです。どこかお話を作りすぎていた「ズートピア」より、同じ動物モノアニメ映画なら、僕は本作を選びますね。

歌は字幕版、日本語吹替え版とも、それぞれのキャラクターの声を充てた声優たちが、華麗な美声を披露してくれているんだとか。顔は見えませんが、各俳優たちの美しい歌声に心も酔いしれます。僕は予告編のイメージに引っ張られて字幕版で堪能しましたが、日本語吹替えも(もちろん、歌も日本語)よいらしいので、両方観るのもオツなのかもしれません。