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SING/シングのkouのレビュー・感想・評価

SING/シング(2016年製作の映画)
4.0
《表現できない思い》
音楽は何故素晴らしいのか。観終わって考えさせられた。例えば人生における不遇。恵まれない環境や押し殺している感情。表現できない思いや本当の自分。そんなものを音楽はすべて表現する。そしてそれはいつも言葉よりも饒舌で、いつも深い感動を与えるのだ。

今作はそんな音楽の素晴らしさについて凝縮したようなアニメーションだった。制作は「ミニオンズ」、「ペット」などのイルミネーション・エンターテインメント。今作は60曲以上の名曲が流れ(それだけでも凄いのだが)、群像劇的な要素もある作品だった。それぞれの登場人物にスポットを当て、その人生と音楽を融合させる。

例えばギャングの父親の前で本当は歌が好きという繊細な一面を出せないでいるジョニー。子供の世話に追われ、自分の本当の好きな歌への思いを持て余している主婦ロジータ。彼氏の前で自分の意見を言えないロックシンガーアッシュ。人前で歌を歌う事ができないミーナ。それぞれが自分は歌が好きなのに、歌う場所がないのだ。それはつまり、本当の自分を出せる場所がないともいえる。

そんな彼らが、劇場でのオーディションを機に自分たちの表現の場を得る。物語はハラハラする展開を迎え、最終的にとても素晴らしいステージを作り上げるのだ。彼らの歌は誰かに届き、そして時に自分自身のために歌っていく。その過程がとてもエモーショナルで、とても感動的だった。そして何より、彼らのそれぞれの悩みの中で、支えるものが歌ということに胸が熱くなる。

洋楽好きは勿論。アニメーションとしても感動的で面白い作品だと思う。イルミネーション・エンターテイメントの新しい看板作品ができたのではないか。
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