むーしゅ

SING/シングのむーしゅのレビュー・感想・評価

SING/シング(2016年製作の映画)
3.4
 ミニオンズシリーズですっかりお馴染みのイルミネーション・エンターテインメントの作品。前作「ペット」と今作どちらも既に続編が決まっているという人気ぶり。

 ムーン劇場の支配人でコアラのムーンが劇場の存続をかけて歌のオーデションショーを開催することにするが、賞金を1,000ドルと書くはずが100,000ドルと書いてしまい・・・という話。世界観は完全に「ズートピア」にそっくり。というかもはや同じ世界の中での出来事に見えて仕方がない。制作側がどのタイミングでお互いを認識したのかは知らないけれど、世界観のモロ被りには焦っただろうな。

 さてこの作品の見どころはやはり歌唱シーン。こういった歌をテーマにした映画ではオリジナル曲が中心なケースがほとんどかと思いますが、こちらはElton JohnとかFrank SinatraとかStevie Wonderとか有名どころの曲をふんだんに持ってきているので、音楽映画が苦手なひとでも一度は聞いたことがある名曲にすんなり入っていけるはず。特にオーディションシーンはテンポもよく進んでいき、非常に見ていて面白いシーンに仕上がっている。

 ただ正直言えば、ラストショーはもう少し頑張れたかなという印象。まぁ結局人間が出てくるわけではないので、ある程度は仕方のないことなのかもしれませんが臨場感がないんです。動物が本当に歌っている感じがしない。またこれは録音の問題でもあるんでしょうが、コンサートというよりはスタジオでそつなく歌っている感がすごいんです。なんか映像と音楽がミックスで届かずに別々にやってくる感じ。まぁこれは歌い手選択の問題もあると思うんですよね。恐らく今作で最も歌唱力がある設定のゾウのミーナを演じるTori Kellyですが、彼女はどちらかといえばWhisper系の歌い方が上手い歌手。ショーのラストを飾るならこっちにJennifer Hudson(ひつじのナナ役で使ってしまった)みたいな強い歌声の歌手を持ってくるべきだったと思うんですよね。まぁTori Kellyは2015年に非常に話題になっていたので使いたかったのはわかるんですけどね。やっぱりそういう意味では"Sister Act 2"のLauryn HillがJoyful Joyfulを歌い始めたときの全身に鳥肌が立つような感覚にはほど遠かったですね。全員無難だけど、全員パンチにかけるなぁという印象。ちなみに個人的にはゴリラのジョニー(Taron Egerton)にバラード、ネズミのマイク(Seth MacFarlane)にアップテンポを歌ってほしかったです、逆で。だってマイクは「テッド」が話しているようにしか聞こえないし。

 そういえばレッサーパンダの五人組"The Q-Teez"は、きゃりーぱみゅぱみゅの唄を歌っているということが日本でも話題になっていましたが、歌のオーデションなのにラジカセを使用し、また何度歌ってもステージに挙げてもらえない姿は、正直日本の音楽界の口パク文化への風刺と、「米国にはそんな子供だましなショーはいらないよ」という批判をされているようで、素直に喜ぶのは違うのでは?という感じでした。2では見返せるといいんですが。
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