ちろる

ゴッホ~最期の手紙~のちろるのレビュー・感想・評価

ゴッホ~最期の手紙~(2017年製作の映画)
5.0
正直、ここまで心を動かされる作品だとは思わなかったのに出だしからもう名作の予感で嬉しすぎる誤算だった。
まだ今年も残り一ヶ月半ありますが、推定MY今年No.1、いやここ数年でもMY BEST MOVIEBかもしれない傑作。
本当はフィンセント・ファン・ゴッホの名画たちが125名の画家たちによって動き出すという映像体験ができるだけで満足だったのに、蓋を開けてみればアート作品という枠に留まらず脚本も素晴らしくて、絵画×サスペンス映画×アニメーションという全く新しいエンタメ芸術作品としての偉業を成し遂げたのではないかと思う。
フィンセントの描いた有名な肖像画たちに名優たちが重なり合い、息吹を与えられていく圧巻の映像だけで贅沢な気分が味わえるのはもちろんのこと、モノクロ絵画による映像によって過去を振り返りながら語られるストーリー構成はテンポも良く、フィンセントの周りを取り巻く人間たちのキャラクター演出もとても魅力的に描かれていた。
そしてなによりも、この作品作りに携わった画家たちの描く炎の動きごとに動くランプのあかりや、風に揺らぐ黄金色の稲穂、陽の光で色彩の変わる小径の小石も、湖の水飛沫にも生命の息吹を見つけることができたであろう純粋なフィンセントの眼差しと精神世界が時空を超えてフィンセントから届けられたような錯覚にさえなってしまう。
そしてこの映像が彼の孤独さ、繊細すぎる心の中の深層世界をこの作品の主人公でもあるアルマンと共に旅をしていくうちに何故か中盤から涙が止まらなかった。
こんな企画を思いついた監督がもう変態の領域だし、この企画が通り、協力した画家たちにも力いっぱいの拍手を贈りたい。

日本に原画が来るときは観にいくゴッホ好きな私だからこの作品に特別な思いを抱いたのかもしれないけれど、ゴッホについてよく知らない旦那に聞いたら素晴らしい!と超絶賛していたので私の独りよがりではないはず。
これは映画館という空間で堪能できたことがとても嬉しかったので是非とも上映館を増やしてもらいたい作品。
そして、目が足りないと思ったので是非ともまた再鑑したい。
この映画を、観ることが出来たことを幸せに感じるし、この作品に携わった人全員にありがとうを言いたい。今はそんな思い。

#映画ファン賞2017
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