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ゴッホ~最期の手紙~のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ゴッホ~最期の手紙~(2017年製作の映画)
4.5
ゴッホがテオに送った最期の手紙を託された、"まだ何者でもない青年"アルマン・ルーランが、生前のゴッホを知る人々を訪ね歩き、彼の死の真相を探す。
悲劇の天才はなぜ死んだのか。
誰もが異なる"事実"を話し、アルマンが混乱する様はまるで「羅生門」の様。
懸命に何かを成し遂げようとしていた、ゴッホの人生を辿る旅は、アルマンに自分自身と向き合わせる。
ストーリーもテリングも、かなりユニークな美術史ミステリ。
油絵調アニメーションは、ガラス板を使うアレクサンドル・ペトロフが有名だが、これはちょっと違う。
俳優の演技をトレースするロトスコープ技法で、現在のアルマンのシーンがゴッホの油絵調、過去のシーンが写実的で緻密なデッサン調のモノクロで描かれる。
推論の過去は不確定だからデッサンで、現在はゴッホが既に世を去った、完成系の世界ということか。
いずれにしても、恐ろしく手間のかかった労作。
大学の美術史で習った程度しかゴッホのことを知らなくても結構楽しめるのだから、美術史マニアなどは更にディープに観られるのだろうな。
日本の洋アニ市場の現状を思えば、コレがシネコンでやってるのは凄いかも。