回想シーンでご飯3杯いける

ゴッホ~最期の手紙~の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ゴッホ~最期の手紙~(2017年製作の映画)
4.0
美術の教科書にも載っていた、あの風景、あの人物が、アニメーションとなって動き出すという衝撃体験! ゴッホを敬愛する125人の画家が集まり、計6万枚以上の油絵を製作。それをもとにアニメーションとしてまとめたという、まさに狂気が生んだ作品。

絵画が主役ともいえる本作なので、スクリーンに字幕が入るのは嫌だった。敢えて吹き替え版を観に行ったのは正解だったと思う。スクリーンが巨大なキャンバスになったようだった。特に「郵便夫ジョゼフ・ルーラン」や「医師ガシェ」等のゴッホの作品の中でも有名な人物が動き出すと鳥肌が立つ。ゴッホの作品に詳しい人であれば、全編に渡って新鮮な感動を味わえるだろう。

ストーリーは、ゴッホの死後、縁のあった人物の証言を元に、彼の生前と死の真相に迫る構成になっている。これは黒澤明監督作品「生きる」等で用いられている手法で、ゴッホの人物像を多面的に捉える事に成功している。しかし、そのストーリーにぐいぐい引き込まれたかというと、実はそうでもない。絵空事という言葉がある事からも分かるように、僕達は絵の中の世界に現実感を持たないのかもしれない。冒頭部分だけでも実写にして、美術館→油絵→アニメーションという風に、この独特な世界観に導く手法を取り入れれば、更に凄い作品になったように思うのだが、それだとアート的な持ち味は後退してしまうのかもしれない。