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ゴッホ~最期の手紙~の小のレビュー・感想・評価

ゴッホ~最期の手紙~(2017年製作の映画)
3.0
俳優が演じた実写映像をもとに125名の画家たちの6万2450枚におよぶ油絵でアニメーション化したという今までになかった映画。これは1度見ておかなきゃということで鑑賞したものの、あえなく寝落ち。面白くなかったから寝落ちしたのか、寝落ちしたから面白くなかったのか…。その後、『殺されたゴッホ』(マリアンヌ・ジュグレ著)という本をたまたま知り、読了したうえで、再チャレンジ。

結果…、やっぱり面白くなかったかも。油絵のアニメーションについては物珍しさが先に立ち、ちょっと見て満足。労力は凄いと思うけれど、絵画が動くこと自体にあまり感動はなかったかな。絵画やゴッホに造詣が深ければ違う印象を持ったかもしれない。

自分的に問題なのがストーリー。ゴッホの死は自殺だったのか否かを探るサスペンスらしいけれど、ファクツだけ集めて投げっぱなしのドキュメンタリーのように感じてしまった。

ゴッホが自殺した約1年後、郵便配達人ジョゼフ・ルーランが、ゴッホが書いた弟テオ宛の手紙を息子のアルマンに託す。アルマンは配達の過程でゴッホが何故自殺したのかについて疑問を抱き、真相を探ろうとゴッホを知る者に聞いて回る。

ゴッホが描いたであろう肖像画の人物(違うかな?)が動きだし、自分の推測や想像を語る。アルマンは途中もめ事に巻き込まれたりするものの、基本的にはインタビューがメイン。ゴッホの死について巷間知られているようなエピソードが語られるものの、アルマンの推理は証明されず、モヤモヤしたまま終了。この物語は一体何を伝えたかったのか、自分的に響くものがなかったかな。

一方、『殺されたゴッホ』はタイトル通りゴッホは殺されたものとして、そこに至るまでの2年間を描いた物語。ゴッホの才能を信じて疑わないテオや、ゴッホとは絵画の方向性もそりも合わないゴーギャンとの関係、ゴッホに対する周囲の無理解などを示しつつ、人間ゴッホの内面を描いている。さらに大胆にも、作品を生み出す際のゴッホの心情が違和感なく描写され、引き込まれる。

絵画やゴッホにそれほど興味がない自分でも親しみの気持ちがわいてきて、ゴッホのことをもっと知りたくなり、ゴッホの絵を、もっと見たくなる。しかし、本作はといえば…。もっと絵を見たくなるのは目には見えないものに共感するからで、絵が動くからではなさそうだ、自分の場合。

映像が映画であるためには、被写体の動きを切り取る作り手の意志、つまりは「動きの創造」が必要であると本で読んだ。本作は、絵画を動かすこと自体に対する作り手の意志を強く感じるし、その労力は凄いと思うけれど、映画的な「動きの創造」を自分はあまり感じることができなかった。それは、被写体がリアルな人物であったとしたら、ドラマチックに撮れていないということかもしれない(自分でもよくわかっていないけれど)。

絵画やゴッホに詳しければ、面白く見れたかもしれないので、多少知識を蓄えることができたらまた本作を鑑賞し、どう感じるかを楽しみにしておくことにしようかと。

●物語(50%×2.5):1.25
・もっとゴッホを描いて欲しかった。

●演技、演出(30%×2.5):0.75
・サスペンス感乏しいドキュメンタリー風。

●画、音、音楽(20%×5.0):1.00
・そうは言っても唯一無二。見ておいて損はないだろうと。
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