「頭を空っぽにして見る」みたいな形容ってあんま好きじゃないのですが、この映画の場合は「重さ」を意図的に省いて最初から最後まで軽く見ることを強要、と書いたら強すぎるけども、主張はしていると思うので、最後まで見て何も腹に残らなかった。「こんな感じで軽く進んで終わるのだろうなあ」と舐めてかかると本当にそのままラストを迎えてしまい、嬉しい誤算が何もない映画だったのが残念。
大きな問題点としては、マーサとフランシスという主役カップルの成立について、特に観客側で喜びを見いだせないことだと思います。劇中で、人間関係が発生する必然を描くって相当難しい話であるとは思うのですが、映画全体の軽さから、あってないようなきっかけで二人がカップルとして成立し始めたことについて、「まあそんな大して意味感じなくてもいいんでしょ」と思えてしまうようなつくりをしているので、「フランシスの孤独を癒す」という数少ないキャラクターの暗部にフォーカスする意味がなくなってしまってるように感じます。マーサの「男運が悪い」なんてのも、劇中でヘビーな問題としては扱われてなかったしな。あと結構序盤からこいつ狂ってるように見えるしさ(アナ・ケンドリックの資質だとも思うけど)。
だからこう、主要キャラクターの描きこみ不足によって魅力が不足して観客がついていけなくなり、どうでもよい映画になってしまってた。上映時間は90分台とタイトなのに、どうしても完結に向けて興味を持続できなかった。「恋人と約束したからもう人を殺さない」みたいな縛りとか、発生した瞬間もあいまいだし、マーサは「別にいい」って言ってるし、それでも守り続ける理由がわからんし、映画全体に何か良い影響があったんかね。いちいち強調するのが鬱陶しかったです。
この映画中の癒し枠として、ウータン・クランのRZA演じる殺し屋スティーブがいるのですが、唯一ローテンションで全く普通の人間らしい判断をし続ける彼が、フランシスに傾倒する感じとかとても違和感があった。フランシス別にそんな大した奴じゃねえよ。
なかなか、テアトル梅田やシネ・リーブル梅田で当たり屋的に映画を見てピンとくる良作に当たるのは難しいと感じるところでありました。