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ホール・イン・マネー! 大富豪トランプのアブない遊びの小のレビュー・感想・評価

3.1
もしかしたら、アメリカ大統領になっちゃうかもしれないドナルド・トランプ氏がどんな人かを知りたいがために鑑賞。手荒で違法なゴルフ場開発を手掛ける大富豪トランプ氏を、スコットランド人のジャーナリストのアンソニー・バクスター監督が追求するドキュメンタリーの第二弾、なのかな。

自然環境、地域住民ないがしろのトランプ氏の開発に対し、有識者による見解や市民の戦いぶりを収めた内容。この作品の最大の功績は、トランプ氏本人や同氏の会社の取締役でもある息子への取材に成功していることだろう。

地域住民の声を聞くだけでも、とても酷い人という感じを受けるのだけれど、映画の中のご本人も平気で暴言を吐き、「俺がルールだ」的な強引な性格を感じさせる人物。「こここまでくると、かえって清々しい」という感じは全くなく、札束でひっぱたくという姿が似合う、嫌悪感を抱かせるタイプだ。これは息子や、トランプ氏の取り巻きも同じだ。

個人的な興味は、何故このような人が現時点(3月4日)で、共和党の大統領候補者最有力なのか、ということ。理由を考えるうえで真っ先に思い出すのが、2015年11月に見た映画『みんなのための資本論』。この映画では、格差拡大で、人口のボリュームゾーンである中間階級の生活が苦しくなっており、これが経済の悪化、ひいては資本主義、民主主義に大きな影響を与えかねない、ことを示していた。格差の程度は中間階級の我慢の限界を超えつつあり、怒りの矛先がイスラム教徒などに向かっているとも指摘していた。

2月に見た、映画『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』を思い起こすと、格差拡大は自己責任の面もあるんじゃないか、と思うけど、破産しても罪悪感の乏しい国民性。悪いのは自分じゃない。自分から搾取した1%の金持ちだ、自分と似ていない人たちだ、と。

私的映画鑑賞解釈によるトランプ氏の勢いの理由は、格差拡大の根本原因を省みない、中間階級の我慢の限界なんじゃないかと。「メキシコ系移民は強姦犯」、「イスラム教徒は入国禁止」といったトランプ氏の数々の暴言を、心の中で喝采している人が多いんじゃないかと。

しかし、中間階級の人は気づいているのだろうか。この映画を見る限りトランプ氏こそ、99%の犠牲の上に成り立つ1%の側にしか見えない。トランプ氏は怒りの矛先を1%からそらそうとしているのではないのか。もしもトランプ氏が大統領になった場合、トランプ氏の支持層の大半が期待を裏切られるのではないか。日本は、世界は怖い方向に向かわないだろうか。心配。
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