三隅研次は「映画」というメフィストフェレスに自分の魂を捧げ私たちに「映画」という名の怪物が遺されたのかもしれない。 「桜の代紋」
もうすでにあらゆる所で本作について書きまくっています。
悪友たちには事あるごとに「無防備な状態で近づくなよ」と言いながら実はやたらに観て欲しくない、という矛盾をいささか愉しんでもおります。
この作品の恐ろしさに何も気づかぬまま眠狂四郎、座頭市、子連れ狼を手掛けたウェルメイドな達人として捉えている者などには「たとえお前の寿命が500年延びたとしても映画の色さえ識別出来ないよ」なんて言ったりしてますってのはさすがにウソです。
75年に54歳の若さで夭折したのだから本作発表はその2年前。
三隅監督は酒を飲まずして肝臓がんを患いこの作品の後にも「子連れ狼 冥府魔道」「狼よ落日を斬れ」の2本を撮りながらテレビ時代劇なども演出してるのだから空恐ろしい話です。
あまりにも恐ろしい映画なので70年代のダサく貧しい音楽担当の村井邦彦の仕事が少し観る私たちの恐怖と緊張を軽減してくれある意味コレも才能かな?なんて思わせてくれます。
だけどさすがにここまで恐ろしい映画ですからどのサイトでもレビューは少ないですね。
でもそれでイイんです。
いっそ溝口健二「狂恋の女師匠」のように地上からきれいさっぱり消滅した方が他ならぬ「桜の代紋」という作品にとっても天国の三隅監督にとっても果報かもしれません。