クロード・シャブロル監督のサスペンス・スリラー。
幼い息子を轢き逃げした犯人への復讐にとらわれた父親の執念を描く。
原作は詩人セシル・デイ=ルイス(ダニエル・デイ=ルイスの父)がニコラス・ブレイク名義で発表したミステリ小説『The Beast Must Die』。
先ずはアバンタイトルな冒頭の吸引力たるや!そしてキャスリーン・フェリアーの歌声に震える。物語の核にあるものを短時間で、しかも見事な対比によって映像化する手腕に驚かされる。
いや~それにしても完璧なシナリオ(原作が素晴らしいんだろうけど)だった。
オープニングでガシッと掴んでラストできっちり締める。
引き、或いはクローズアップのカメラを多用し、日記、ブラームス、ギリシャ悲劇、ナレーション効果に8ミリフィルムの挿入… と、観るほどににくい。更には詩的表現と知性すら感じるトリック。父親の悲哀たっぷりなラストに至っては大きく感情を揺さぶられ、なんとも言えない余韻だった。
『いとこ同士』『肉屋』と観てきたシャブロル監督、相性の良さを感じるところ。