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ジオストームのmのレビュー・感想・評価

ジオストーム(2017年製作の映画)
4.2
なんと監督がディーン・デヴリン!
この人はかつてはローランド・エメリッヒと組んで「インデペンデンス・デイ」「スターゲイト」「GODZILLA」等の製作や脚本やってた人。まだエメリッヒ映画が面白かった頃ですね、懐かしき90年代。あ、でもこの人「インデペンデンス・デイ リサージェンス」にも一応絡んでるな・・・・・・

そんな訳で映画監督としてはこれがデビュー作となったデヴリン独立作。
エメリッヒ映画と同じく穴だらけで滅茶苦茶だし人の命は吹けば飛ぶ程軽いが、「デイ・アフター・トゥモロー」以降のエメリッヒ映画のような厭な感じがしないのが好印象だった。主演を務める狂気の闘神ジェラルド・バトラーの暑苦しい豪快さもプラスに働いた、憎めないおバカ映画である。久しぶりにこういう映画を観て何だか楽しくなってしまったので、点は甘めです。

ディザスター映画の割りに災害描写がややあっさりしているが(エメリッヒ映画のような偏執性と言うか粘着質さが無い)、ディザスター映画のジャンルの枠に留まらず陰謀サスペンスやら「ゼロ・グラビティ」まんまの宇宙パニックやらと様々な要素マシマシてんこ盛りの映画なので、観ている最中は心の中で色々ツッコミつつ楽しく観れた(色々欲張り過ぎだとも思うが)。

この映画で個人的にとても気に入ったのが女性の扱い。この映画に登場する女性登場人物は皆強い。
ヒロインの職業は大統領のSPで、メインの登場人物中最も武闘派(冷静に考えると何故バトラーがSPじゃなくて科学者なんだ)。終盤のカーチェイスシーンではクールに表情を崩さずに銃を素早く正確に連射する(この映画の中で最も格好良い瞬間だった)。基本的に彼女と恋人との会話シーンの台詞が寒いのだが、恋人を置いて急遽仕事に行く際に極端に小声にして砕けた親密さを出したりと芝居で味を付けている。
宇宙ステーションの主任も女性で、こちらもクールに表情を崩さず(しかし時折チャーミングに)主人公と共に犯人探しに奔走する(冷静に考えるといったい何故この映画に犯人探し要素があるのだろう、しかもかなりお粗末)。クライマックスでの彼女の行動とその際の繰り返しの台詞が実に良い。
主人公の弟を手助けするプログラマーの女性も良い具合にユーモラス。
女性達が皆活動的で主体的なのは素晴らしかった。

ヒロインを演じるアビー・コーニッシュはジェーン・カンピオン監督「ブライトスター」の主演を張った人で今年度オスカー有力候補の「スリービルボード」にも出演していたり、ステーション主任役のアレクサンドラ・マリア・ララは大傑作「イマジン」で素晴らしい演技を披露した良い女優、と女優のチョイスがやたら分かってるのが作品に良い効果をもたらしている。

ジェラルド・バトラーとジム・スタージェスが兄弟というどう考えても無茶な設定が観ている内にいつの間にか違和感が無くなっているのが不思議。観る前は何故ジム・スタージェス?とも思ったが流石巧い人なので自然と馴染んでいる。


それから大仰な愛国心が全く無いのも良い。



序盤で主人公の家を訪ねた弟が、「俺はもうあの仕事には興味無い」と仕事復帰を渋る兄に対して「じゃあ何故こんな所に住んでいるんだ?」と言うと、カメラが引いて2人が立つ家の庭先とその後ろで空に上昇していくスペースシャトルを捉えて、口ではそんな事を言いつつも仕事を忘れられずシャトルの打ち上げがやや近くで見える所に住んでいる主人公の心の内を言葉ではなく画で無意識下に観客に伝えていて(この時カメラがドリーバックしていくのも良い)、おバカ映画の中にそういう伝える工夫があると何だか嬉しくなってしまう。
撮影されたのはもう3年程前で、完成した後も2年程塩漬けにされていた曰く付きの作品ではあるが、個人的には愛すべき映画だった。

それにしてもエド・ハリスやアンディ・ガルシアは何故これに出てしまったのか・・・
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