八木

ザ・コンサルタントの八木のネタバレレビュー・内容・結末

ザ・コンサルタント(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

僕はこの映画を見る前に「メカニックとかジャック・リーチャーとかキングスマンとかそういうやつ」と思って見に行ったわけですが、そういう映画ではありませんでした。「チョコレートドーナツ」に近いです。
映画を見終わってから改めて予告編を見直してみると、この映画における重大な主人公の要素については示唆する程度で、(ミスリードもあるものの)その見せ方が、この映画の面白さに貢献していたと思うので、ネタバレありで書こうと思いました。見た人全員わかると思いますが、この映画は主人公が自閉症であるという要素を触れずに感想を述べることが不可能な映画だったからです。ここまでもし読んでから映画を見に行く人がいたら、面白さは15%くらい減るかもしれません。意外とそのままかもしれません。
自閉症やら障害を創作物で取り上げられる際にある違和感として、「障害はあるけどほかの才能があったりするよ(だから障害を障害としてでなく個性として云々)」という結論が多いことがある。僕は障害を個性であるとは思わないし、「他の能力で補えるから存在意義がようやく出る」とも思いません。障害をもってこの世に生まれた場合、もっと実質的な、衣食住セックス情報などの問題が本人に降りかかってるわけで「みんな!偏見なくそうぜ!じゃねえよ馬鹿そういう問題か」といつも思ってしまいます。
映画の殺し屋たちが、神がかった身体能力や頭脳を持つことについて「幼少から激しい訓練をしたので」と、あってないような理由で処理されていたことに対して、この映画の場合は「そのような訓練を継続できる理由」として自閉症を当てはめることによって、「ただ強い」「ただ頭脳明晰である」ということにキャラクターの深みを出せていると思います。あんまり長々書いてもあれですが、僕程度の人間が見る限り、自閉症の取り扱いは相当に慎重で、ベン・アフレックの演技は相当リアルだと感じました。特に、コミュニケーションを拒否する主人公が初めて心を通わせる人に出会った瞬間の「ポーカーをする犬」の笑顔な。主人公これまでの生きてきた道を感じて、少し泣きそうになりました。よって、この映画は、「自閉症だけど超人的能力」な映画ではなく、自閉症として生きることにきちんとフォーカスした誠実な映画だと僕は思います。
加えて、キャラクター描写のための前振りが各所の展開にも効いていたり、ポーカーフェイスの主人公だから成立するラスボスの殺し方が気持ち良かったり、自閉症者の脳内を体感できるような「恐れを感じる光・音」の効果もものすごくよくて、相当完成度高い作品だと思います。適当に選んで鑑賞したけど、見て本当よかった。
八木

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