えんさん

ザ・コンサルタントのえんさんのレビュー・感想・評価

ザ・コンサルタント(2016年製作の映画)
3.5
会計士クリスチャン・ウルフは堅実な仕事で、顧客からの信頼も厚かった。そんな中、自ら売り込んだある企業の財務を調査中、重大な不正を発見する。しかし、一方的に依頼は打ち切られ、その日から何者かに命を狙われ始める。だが、彼を狙う殺し屋は、逆にウルフの反撃を受けてしまう。実は彼は、世界中の危険人物の裏帳簿を仕切る掃除屋だったのだ。。ベン・アフレック主演のハードボイルドアクション映画。監督は「ウォーリアー」「ジェーン」のギャビン・オコナー。

「ゴーン・ガール」や「バットマンvsスーパーマン」などの作品で俳優として知られるベン・アフレックですが、「ザ・タウン」や「アルゴ」などの作品では出演の他に、監督や脚本を手がけているように映画クリエイターとしての腕も持ち合わせています。そもそも彼と「ボーン・アイデンティティー」などで知られるマッド・デイモンは、「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」でインディペンデントの脚本家兼俳優としてメジャーデビューを果たしたほどで、映画の申し子というか、「グッド・ウィル〜」以降のキャリアを見ても、映画人として若手から中堅株へ着実な成長を遂げていることが分かります。ちょうど僕自身も、「グッド・ウィル〜」は映画をたくさん見始める前に映画館で観た数少ない作品であり、彼らの成長と、(恐れ多くも)自分の成長を重ねてしまうところがあったりもするのです。マットのほうは俳優を中心とした表舞台での活躍が多いのに対し、ベンは監督・製作業も多くこなし、総合的なところに重点を置いているような気がします。そんな彼らの成長点を本作に見たように思います。

というのも、マットが「ボーン・アイデンティティー」でスパイアクション映画の中に新たな潮流を作ったのと同じように、ハードボイルド作品として、ベンは本作を打ち出してきたように思えるのです。まぁ、彼自身は製作等々は務めておらず、あくまで出演しているだけなので真意は分からないですが、スパイ映画ではないものの、非常にハードボイルドで、カッコいい作品に仕上がっているように思います。予告編から主人公ウルフには会計士とは別に、裏の顔があること(掃除屋)が分かっているのですが、ウルフの几帳面な性格の背景を幼年期の姿とオーバラップさせ、ハードボイルドさが表面的だけじゃないものに仕立てているのが実にいい。ここにそれこそ、”ボーン・シリーズ”を真似るようなハードアクションが加わるので、物語としてもとてもスリリングなものになっていると思います。会計士という”文系”としての几帳面さ、掃除屋で一文も違わない殺しや諜報を繰り広げる”体育会系”の几帳面さが合わさっている。このカッコよさにとことん痺れてしまうのです。

ただ、物語は後半になるほど若干締りがなくなるのがとても残念。会計士として乗り込んでいくところはいいのですが、そもそもこの企業をなぜ狙ったのかという理由の部分がイマイチスッキリとしないのです。このモヤモヤを抱えながら、終盤の大団円を見させられ、オチは結局意外(?)な形での兄弟の再会となるのが腑に落ちない。敵の親玉は部下が次々と殺されるのに、ああも簡単に懐柔してしまっていいのですかね。。主人公のキャラクター像は完璧なまでに作り上がっているので、次作につなげるときはもう少し物語の組み立てをしっかりしたほうがいいと思います。