まりん

ヒトラーへの285枚の葉書のまりんのネタバレレビュー・内容・結末

ヒトラーへの285枚の葉書(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ナチス政権を扱う作品としては、凄く地味かもしれない。
沢山のユダヤ人への酷い虐殺が出てくるわけではない。
だけど、たった一人のユダヤ人の死が、平凡な夫婦がヒトラーに向けて始めた地味な戦いが、切なくて、リアルに沁みこんでくる良作です。
ちょっと前まで親しい隣人で、お菓子をくれる近所の優しい老女を、何の疑いも無く迫害し尊厳を奪う。
幼い頃のキラキラした思い出と共にある良心と、政権が植えつけた価値観とを天秤に掛ける?
揺らがない筈はない。彼は動揺した。
だけど老婆は、帰らぬ人を待つことに絶望もし、自分の尊厳を守るためにも道を選んだのね。

戦争だもの。被害に有ったのはユダヤ人だけじゃない。
戦地に行った誰かの大切な子供、親、愛する人、その人も、それを失った人もまた被害者で・・
祖国が、間違った方へ向かって怪物のように変貌し、突き包んで行く様を、正常な人たちはどう感じ、どう動いていたのか。
その絶望が、ひしひしと伝わってくる。

きっと当時、こういう人たちが沢山居たのだ。ドイツにも、日本にも。
まりん

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