skm818

ヒトラーへの285枚の葉書のskm818のレビュー・感想・評価

ヒトラーへの285枚の葉書(2016年製作の映画)
3.9
戦争で息子を失った職工長とその妻が、ヒトラー体制を批判するカードを作成しては道端に配置する形で配りまくっていたという話。同じアパートのユダヤ人女性のことなど、近所に住んでる人たちの様子も結構描かれている。そして事件の捜査に当たった警部の様子も。
捜査担当責任者であるがゆえにカードの内容の影響を受けてしまう警部が印象深かった。ここまではいかなくても、教育を受けて考える力があるがゆえに立場との板挟みでおかしくなった人というのは意外といるのかもしれん。この人自身、上司に言いがかりをつけられて理不尽にボコられたりしている。何かおかしいのではないか?とは思っていたんだろうなあ。でも逆らえない。
近所に住んでる高名な判事もいざとなったら何もできない。主人公自身、近所の住人が誤認逮捕されているのに、あんなやつ関係ないとか言ってるわけですよ。下手に他人のために動くと自分が危ないんだよな。
一方で、ユダヤ人の家に盗みに入ったゴロツキ(ユダヤ人の財産を一般人が盗むのは国家から盗むことになるらしい)を叩き出したあと自分が室内物色してるナチの隊員だとか、夫が親衛隊ってだけで勤労奉仕を免れている金持ち女だとか、それに対しておかしいと思いつつもそれを咎めた側が謝罪しなければいけないような状況だとか、全体主義や戦争が人を蝕んでいる様子がよく伝わってくる。疑問を持っていても何もいえない状況。
285枚中警察が回収できなかったのは18枚ということだが、警察に届けなかった人たちはどう考えていたのかな。
skm818

skm818