ダイセロス森本

ヒトラーへの285枚の葉書のダイセロス森本のレビュー・感想・評価

ヒトラーへの285枚の葉書(2016年製作の映画)
4.4
Alone in Berlin
息子を戦争で失った労働階級の夫婦が街に政治に訴えかけるカードを置いてゆく話。静かで淡々と進み、ただカードだけが描かれる。この情勢の中で起きていたひとつの小さな行動を映す。

筆跡でばれないように。指紋で追いかけられないように。
どうして英語?って思う所もあるけど見やすい。警部の心が分かりすぎて最後も納得したけど、無実の人を…と思うと…でも彼もそれをしないといけなかった…はああ。無理。生きることをやめたくなる。。

住む国でこんなに苦しくつらく生きなければならなくなるって、人間として、同じ平等な人間として、あってはならないこと。ヒトラーが今もひとつの映画のカテゴリとして残っているのには、この惨状を訴え続けなければいけないから?いつかこれが忘れられて、なかったことになってしまったら、同じ歴史を繰り返す人がきっと出てくるかもしれないという未来の人間に対しての怖れがあるからなのかな。

淡々と描かれる夫婦の苦しみにこちらが負けそうになる。すべてを終えたふたりが再会した時のあの笑顔はきっと忘れない
解放感と絶望と、息子に近づける希望は、あってはならないのに、そこにはあった