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アスファルトのKEYのレビュー・感想・評価

アスファルト(2015年製作の映画)
4.0
「アスファルト」ってあの〜道路のやつだよなってわかってたのに、「コンクリート」と一緒に考えてました。ごめんなさい笑

そう。今作のタイトルの「アスファルト」は、全国の道路に使われてるやつ。
今作の登場人物はと言うと、
服役中の息子を持つアルジェリア系移民の女性。
舞台となるフランス郊外のとある団地にたまたま落ちてきたNASAの宇宙飛行士。
鍵っ子の高校生。
かつては活躍していたらしい引っ越してきたばかりの女優。
車椅子の頑固なおっちゃん。
訳ありの夜勤務の看護師。
それぞれが一人暮らしで、孤独なのである。
今作、音楽と言いドラン監督の『マミー』の様な正方形に〝やや近い〟アスペクト比だったりおしゃれに感じる映像なのだが、ストーリーはかなりシュールである。
NASAの宇宙飛行士は団地に落ちるし、昼間っから酒を飲む落ちぶれた女優を演じるのは今『ELLE』で話題になっている大女優イザベルユペールなのだ。
特に面白かったのが一人暮らしの頑固なおっちゃん。冒頭からアパートの壊れそうなエレベーターの修理費を「二階だから階段で十分」という理由だけで出さなかったのだが、そんなおじちゃんがヒョンなことから車椅子の生活になり、エレベーターの使用を余儀なくされる。
Twitterで「老害」って言葉を平然と使う人には驚かされたが、この頑固なおっちゃんの性格は酷い。映画だから笑えるが、実際身近にいたら間違いなく嫌いなタイプだ。
孤独な理由が明確にわかる人物もいるが、わからない人物も居る。
鍵っ子(自分は周りにそんな人が居なかったから知らなかったけど、働きに出てる子供の事を言うらしい。)の高校生は、高校生活の描写が一切無い。恐らく給食費のワンカットが無い限り、「高校生」と言うことすら分からなかっただろう。
宇宙服をなかなか脱がないし、秘密にして居るはずなのに帰りにわざわざ宇宙服を着て行く今作一番のネタ要素のNASAの宇宙飛行士ですら、私生活にはほとんど触れられないのだ。
彼は服役中の息子を持つ移民の女性の家に二日間住まわせてもらうことになるのだが、宇宙ってどんな感じなの?という質問にペンと紙を持ってこう答える。
「海みたいな感じさ」

今作は登場人物の背景にほとんど触れない。孤独をテーマに扱っているだけあって登場人物の醸し出す雰囲気は、シュールかつエモーショナル。
しかし孤独な6人の話なのに、今作は底抜けの明るさがある。
これといったオチは無いのだが、今作の登場人物の先に見えるのは〝希望〟なのだ。
宇宙飛行士だって2日経ったら居なくなるし、鍵っ子の高校生だって一人暮らしのままだ。 車椅子のおっちゃんの性格も変わることはないだろう。

「それでもいいじゃん。」
別に孤独でも良いじゃん。今作を観ると不思議とそんな気持ちになる。
フランス郊外のとある団地の孤独な6人。あえて設定を細かくしなかったのは、誰にでも共通する物語にする為なのだろう。
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