ペイン

サイドウェイのペインのレビュー・感想・評価

サイドウェイ(2004年製作の映画)
4.5
再見。

名門スタンフォード大学卒のエリートで顔もハンサムで声も低くて渋いアレクサンダー・ペインですが、撮る映画はいつもうだつのあがらない負け犬にスポットを当てたものばかり。

とあるインタビューで「何故ペイン監督はこの映画に出てくるような負け犬の人の気持ちがわかるんですか?」と訪ねられ、ペイン監督は「君は僕をよく知らないからさ。個人的に僕という人間を知れば、僕の中にも負け犬がいることがわかるよ。いや、人は誰でも本当はみんなそうだと思うよ」と答えている。なるほど納得のいく回答です。

ただ本作、一見ポスターヴィジュアル然り心温まるハートフルストーリー的な感じに見えますが(そういう面も勿論あるが)、実はかなりペイン監督のシニカルさが炸裂しておりほろ苦い余韻の1本。

監督が広言している通りたしかに起伏少なめなストーリーテリングや、一見こだわりがなさそうに見えて用意周到に計算された画面設計等、小津からの影響はあると思うのですが、この底意地の悪さというか登場人物を徹底的に落とし入れる感じは、イ・チャンドン、マイク・リーなんかに通ずるものもあるなと個人的に思います。なのでこれらの監督の作品が好きな方はハマる可能性も高いかなと思うわけです。

『アバウト・シュミット』でも誰も見たくないキャシー・ベイツの裸体をさらしたペイン監督ですが、今回も太った男を全裸疾走させていましたね(笑)

ただ本作はそんな底意地の悪さというか才気走った感じが、これまでの作品よりより自然に溶け込んでいて、ペイン監督が遂に巨匠の風格すら感じさせた大傑作。
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