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ブラック・スワンのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

この作品の本質を理解するためにはやはり「Swan Lake」が何を言わんとしているのか理解することが不可欠である。そうすれば物語がどのように進み、締め括られるのか、容易に想像がつくだろう。

「Swan Lake」において白鳥と黒鳥は別々の個体として扱われることが多いが、実際はひとつの個体が持つ善と悪であると私は考える。白鳥は純粋と臆病の象徴、黒鳥は誘惑と自信の象徴だろうか。そう解釈すると最終幕で白鳥が死ぬのは純粋であることや臆病であることからの旅立ちを意味している。最終幕で白鳥を生かすか、殺すか、カンパニーによって演出は異なるが、やはり殺してしまうほうが作品の意図にとって必然であるし、私としてはしっくりくる。

ということは、本作の最後にニナがあのような行動に出た理由も十分すぎるほど理解できるだろう。そう、「完璧」すぎるほどに「完璧」なのである。

しかし、バレエを題材とした映画作品として完璧かと言われると、応えは否。世界トップクラスの英国ロイヤルバレエの「Swan Lake」を観てきた私にとってはバレエの完成度が少々物足りないのが正直なところだ。ただこれだけ難しい映画である。ナタリー・ポートマンはじめ、この映画の制作に関わった全ての人に尊敬の意を表したい。

今敏監督の『パーフェクトブルー』と重ねるレビューが多く見られるが、わからなくもない。ただ、本作の最も優れている点は1人の人間、あるいは役者の人格が乖離していく様子を「Swan Lake」と重ね合わせたことではないだろうか。このバレエ作品が一個人の分裂を象徴する作品に他ならないからである。
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