オレオレ

ブラック・スワンのオレオレのレビュー・感想・評価

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
3.5
その道のプロ、そしてトップを目指すなら何を犠牲にしてもよいのか?はたまた犠牲にすべきか?

小顔ナタリー・ポートマンが、技術的には完璧だけれどもトップになるには何かが足りないバレリーナを熱演。白鳥の湖の主役に抜擢されるものの、パワハラ振付師から「良い子ちゃんでは黒白鳥を表現できない!自分を開放しろ!」とダメ出しされる。目の前で元プリマがボロ雑巾のようになっていくのを目の当たりにし、その他白鳥、の同僚の妬みの対象にもなり、かつ自分とは正反対のバレリーナへの強烈な嫉妬や焦りを感じる毎日。家では自分を産むためにバレエを辞めたという母親の無言のプレッシャーが・・・。

テストの点数で合否や評価が決まるのではなく、見る人やそれこそ振付師の主観で評価が決まる芸術の分野でトップを目指すのって大変そう・・・。コンテンポラリーなものが流行れば、伝統的な表現がうまい人は今風じゃないってだけで評価下がりそうだし。100点取ったら終わり、じゃないところも辛い・・・満足した結果が出た!イコール自己満足でそこで終わっちゃうんじゃないか、って恐怖もあるだろうし。
そう思うと、理不尽かつ横暴とはいえ、サラリーマンである自分の上司の評価なんかにいちいち一喜一憂すんのも小せぇな、って思える、笑。

主役のニナを演じたN・ポートマンは当時30歳くらいですが、バレエしかやってきてないホワホワ感がよく出ていた。いまだに母親のことを「マミー」と呼び、部屋には大量のぬいぐるみで着るものもピンクと白ばっかり。一方のミラ・クニス演じるリリーは黒とグレーを着たタバコ飲みの酒飲みのパーティガール。そりゃ黒白鳥でしょうよ、笑。
いつまでたっても優等生の踊りから抜け出せないニナはリリーに主役を取られそうになったまま本番を迎えるが、ある瞬間に「黒」部分が目覚める。まーその辺は予測される結末に向かうんだけれど、白鳥の湖の音楽と相極まって緊張感がスパイラルに高まっていく。

それにしてもバレリーナということもあって踊り子みんながほそーーい!N.ポートマンは10か月も特訓したそうだけど、相当きつかったろうな・・・まあ、その結果が体形にも踊りにも、主役の悲壮感にも出ていると思うんだけど。

その道を極めるってホントに大変そう・・・アーティストしかりアスリートしかり。自分の好きなこと、得意なことを極めているだけなのに、気づいたら国旗や国の名誉まで背負わされてしまうアスリートたちの見るに堪えない祭典がまた始まるとか・・・合掌。