はっきり言ってこれより怖い映画は観たことない。恐怖の取り扱い方が上手すぎる。とはいえただ怖いだけの映画じゃない。面白いのが、結末に至る頃にはその恐怖がいつのまにか畏怖に変わっているということ。主人公が段々才能を開花させるにつれて、恐怖の質も変わっていく。最初はまあ違和感を感じるくらい。でも中盤に差しかかってくると段々見知った恐怖が顔を覗かせる。この痛み俺知ってる！みたいな、誰もが経験したことがある身近な恐怖。でもそれもまた過ぎると、今度は未知の恐怖が襲いかかってくる。もうここまでくると世界がおかしいのか自分がおかしいのかわからない。今まで自分が盤石だと思っていたものが崩壊していく。そしてその経験を経て、最後には自分自身が恐怖を与える存在になっていく……。
この映画で描かれる狂気と共に才能が開花していく様は美しいという他ない。これが一番意味わからん。すげー怖い印象なのに、この映画を一言で表せと言われたら俺は迷わず「美しい映画」と答える。通常使われるような、本来的な意味の美しさなんて映画内にあんまり無いはずなんだけどな。傑作。
