マサラチャイ

ブラック・スワンのマサラチャイのレビュー・感想・評価

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
5.0
バレエとホラーという珍しい組み合わせ。美しさと怖さが違和感なく共存する独特な雰囲気に引き込まれました。不気味で怖く見せる演出力が突出しています。日常に忍び寄る不穏な影。リアルに想像できる痛々しさを描くのが上手いと思うました。美しさと怖さを芸術の域にまで高めて作品です。ラストシーンの美しさは思わずため息が出るほど。登場人物の性格が丁寧に作り込まれていて、ニナと母親の関係の変化、リリーとの出会いで大人の女性として幼虫から蝶への変貌、無垢な少女から大人の女性への成長など、人間を見事に描いています。これほど人間を知り尽くした映画は希少です。エンドロールに、「ニナ:白鳥の女王、リリー:黒鳥 エリカ(母親):女王 ベス:瀕死の白鳥」とあり、映画全体でその役割を果たしています。隙のない作り込みのすごさに感心しました。ニナがトゥーシューズを縫い合わせるシーン、イヤリングを外すシーン、トゥーシューズにガラスをつけるシーンなど、一つ一つが魅力的で作品をより奥深いものにしています。全ての映画の中で一番好きな作品です。