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婚約者の友人のSouのレビュー・感想・評価

婚約者の友人(2016年製作の映画)
4.9
A SINGLE MANに並ぶ美しすぎる映画。喉が詰まる切なさ。ニネ演じるアドリアンとポーラ演じるアンナ。2人の境遇によるシンメトリーさが掛け合えば掛け合うほど、その切なさは強度を増していく。最終的には恋愛関係の枠に入る意思を表すが、序盤や中盤までは一切その決定的要因を見せないところが安い映画ではないことを裏打ちする。(まあオゾンがそんなことするはず無いのだが。) ヌーヴェルヴァーグの伝統技法のモノクロームとカラーの感情変化や意識変化も効き、またその手法も非常に効果的に為されている。とりわけラストシーンは素晴らしい。その点個人的に気になるのが、アンナが湖の中へと自殺を図るシーン。あの手前は完全なモノクロではなく、赤みのみがうっすらと解除されている。あれは血の滾りを表していたのか。基盤に第一次がある為、その戦争とは直接的ならずともこの様に人々に傷を負わせるというメッセージなのか。いずれも徹底された反戦メッセージは目頭が熱くなる。その点もこの映画の圧倒的美しさの要因を担っている。アドリアンがフランツを殺したというのは本当なのだろうか?そもそもそこから問いたいような気もする。そしてなにより、アンナのフェミニストとしての行動にある。それはドイツへ出向いたアドリアンとフランスへ出向いたアンナのシンメトリーさだけで終わらせる必要はないだろう。アンナは両親とアドリアンを護るという"決断"をアドリアンがはじめしていた噓によってこなした。そして、個人的に圧巻なのが列車の別れのシーン。初めアドリアンがフランスへ戻るときのアンナが残されるシーン。そして後半のアンナが去りアドリアンがフランスに残るシーン。ここだけはアシンメトリーになっている。アドリアンは名残惜しむようにアンナの乗る席の窓を立ちすくみながら眺め続ける。しかし、初めのアドリアンが去るとき、アンナは列車の進行方向とは反対へ涙ながらにも強い表情で歩んでいく。男女の違いだろうか。いずれにしろ、この映画の象徴的シーンを選ぶとしたらここかと思う。またマネの"自殺"。この映画を観終わったとき、僕はなんだかこのマネの自殺をルーブルで観賞したかのような感覚を得た。そんな圧倒的な美しさをした名画のような映画だ。上映される映画館は、この上映時間の間だけ、ルーブル美術館へと化す。
追記: Phillip Rombiのサントラはやはり圧巻。この映画がここまで美しい所以もオゾンとの抜群の連携ならではだと思う。ショパンのNocturne No.20が抜群にこの映画全体を言い表している。
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