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婚約者の友人のmjnkのレビュー・感想・評価

婚約者の友人(2016年製作の映画)
4.1
2019/07 CS録画。仏映画。フランソワ・オゾン監督作。1919年、第一次大戦後のドイツ人とフランス人の物語。これは怖かった…!人生や運命のようなものの怖さ。好きです、とても好きです。カツカツと足早に歩く主人公、不穏な雰囲気("ミステリー調"ではありますが、内容としてはそうミステリーでもない)、使い分けられる映像の色味…。良かったです。

前半「反戦映画かな?(オゾンっぽくないな)」と思っていたのですが、後半でしっかり「オゾンっぽさ」を感じさせられました。
これは私の勝手な印象ですが、オゾンの映画は大体いつも「個人」に落ち着く印象です。そしてその「個人」は倫理や道徳ではなく、あくまで個人的な目線で肯定される。「こんな生き方をする人もいる」というような感じで。それが他者や社会からどう見えようと関係なく、映画がそれを肯定する。そんな印象です。
そしてオゾン作品は「あくまで個人的なものである感じ」が強ければ強いほど面白い、と感じます。

本作も最終的には個人の話。倫理や道徳、社会に訴えかけるようなメッセージには重きが置かれていないと感じました。重要なのは主人公アンナがどう生きるか。

物語のベースは戯曲らしく、本作はその戯曲を「大胆に改変」しているようです。また、ルビッチの作品の中にも同じ戯曲を元にした映画があるようですが(未見です)、概要を見る限り、恐らく別物とした方が良さそう。

カラーとモノクロとの使い分けについて、最初は「心理的に時間が動いた時」かな?と思っていたのですが「生あるいは死を強く意識した時」とも取れそう。もっと単純に「フランツを強く感じた時」かもしれないし「緊張と緩和」や「現実と非現実」かもしれない。
この想像の余地がある感じも好きです。

この映画が「よく出来た映画かどうか」を問われたら分かりませんが、とても好みで面白かったです。『17歳』を観て、オゾンはもういいかなーと思っていたのですが、今回は当たりを引き当てた気持ちで嬉しいです。
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