映画男

ろくでなしの映画男のレビュー・感想・評価

ろくでなし(1960年製作の映画)
4.0
松竹ヌーヴェルバーグの青春傑作といえば大島渚の「青春残酷物語」がずば抜けているという認識だったが、私は非常に浅はかで、無知だった。この「ろくでなし」という映画。傑作である。現在にも通ずる若者の不変の鬱屈、退屈、やるせなさ、将来への不安、何かやらかしてみたいギラギラした感情が卓越に表現されている。サブプロットとして描かれる、若者ら曰く、高慢痴気な鼻をへし折りたくなるような秘書のドラマも女性心理が繊細に描かれており素晴らしい。この辺の描き方が「秋津温泉」につながっていくのだろう。銃に撃たれてのたうち廻る芝居は完全にゴダールのそれであるが、オマージュの清々しさに作家の映画愛を感じる。吉田喜重のデビュー作。もう一度言う。傑作である。
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