エミさん

リベリアの白い血のエミさんのレビュー・感想・評価

リベリアの白い血(2015年製作の映画)
2.6
米国NYに生きるアフリカ系移民の人生を描いたヒューマンストーリー。

内戦の傷痕が色濃く残るアフリカのリベリア。主人公はゴム農園で働きながら家族を支えて生きる男性、シスコ。生活は苦しく労働組合があってもあてにならない日々を送る中、久しぶりに会った従兄弟から、NYでの生活話を聞く。日曜礼拝での説法にも勇気づけられ、家族のために自身も移住を決意。NYのリベリア集落でのツテを頼ってタクシー運転手の職に就き、新天地で自由を手に入れたかに見えたシスコだったが、リベリアで共に兵士をしていたジェイコブとの思わぬ遭遇により、忌々しい過去のフラッシュバックに苛まれる。ようやく手にしたと思った自由は、いとも簡単にこぼれ落ちていってしまうのである…。

失礼ながら…。シナリオの分かりにくいところはありました。シスコをはじめクローズアップされた人々の状況はよく分かるものの、社会情勢や権力的な話の描写が少ないため、リベリア共和国全体の現状況が見えず、何故、その人達は今だ貧困に苦しんでいるのか?、何故、その人達は世の中の情報をキャッチ出来ず苦しんでいるのか?、といった現状の社会問題の根本原因を推測することが難しかったため、ストーリーには感情移入しがたかった。
でも、映像美はとても素晴らしかった。日本人が製作したと思えない、現地での臨場感や状況が細部にわたって浮き彫りになっており、そこに生きる人々の熱や息遣いが伝わってくるような真に迫った描写でした。
作品にのびしろを感じた。今後の作品にも期待したい監督さんだ。

ゴムの木を削ると白い液体が湧き出てくるのだが、木に筋道を作って採取する様を引喩して題号が付けられたと思われる。浮き出たゴムの液体が、ゆっくりと溝を伝い落ちてくる様子は、なんだか時間がゆっくりで自然の美しさを感じさせて、その描写は実に印象的な映像だったので魅入ってしまったくらいである。

生きていくために、其の地にとどまりそこを守ろうとする者。守るもののために彼の地へ行く者。どこで暮らそうとも、その人の人生であることに変わりはないのだが、人の欲望と歴史によって作られた国境という隔たりが、『先住民』『移民』という形容詞だけで、何だか先にそこに住んでいた人の方が偉いかのような錯覚を起こしてしまう。共生の為には共通のルールは必要だとは思う。しかし、その最低限のルールすら侵す輩がいると、そこから出て行って欲しいと思ってしまうのは仕方ないことだと思える。誰しも生きる為には、まず生活費を優先するだろうが、本当に必要なのは、お金よりも倫理的な教育の方ではないかと感じた。