140字プロレス鶴見辰吾ジラ

リベリアの白い血の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

リベリアの白い血(2015年製作の映画)
3.5
”月の裏側”

冒頭、夜の闇の中に僅かな灯り。仕事へと夜明け前に家を出る男の姿だと分かるまで時間を要する。男の仕事はゴムの原料である樹液の採取。樹液の採取シーンは、ドキュメンタリー映画の如く丁寧にその過程を見せ、木製の持ち運びようの道具がしなる場面で、これが溢れたは計り知れない損失になることを明示する。

過酷な労働、家族との板挟みの中のストライキ、搾取される側の悲しみと途方のなさ。そしてNYでのタクシードライバー生活。

すべてを説明せず淡々に流しているため、今年のアカデミー賞作品「ムーンライト」のようなエモーションの起伏は少ないし、過酷な労働といえど嫌味でジャイアント的な会社の人間しか出てきていない。

単に生活?

働く夫に対して働く妻たちの民族音楽を口ずさみ帰路を行くシーンのリズミカルで受容した姿勢が印象的。

生活という観点の中での救いのなさや逃げられない世界、そして月明かりさえ導いてくれないすぐ先の未来のあやふやの中、男が去っていく姿が胸に刺さる。