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青春残酷物語のRのレビュー・感想・評価

青春残酷物語(1960年製作の映画)
3.9
再び大島渚作品。本作は、先日見た太陽の墓場よりは分かりやすかったけど、面白さはちょっと落ちるかな。戦後の安保闘争とかが盛り上がってる時代に、前時代の価値観に逆らって生きようとする若者たちによる、前の世代のおっさんたちへの抵抗の痛々しい挫折を描いた、まさに残酷物語。若者たちは、自分は特別な存在だと思い込んでるだけのただのゴロツキなのがますます哀しいですねん。夜の街でヒッチハイクして、見知らぬおっさんの運転する車に乗せてもらった若い娘真琴が、おっさんにラブホに連れ込まれそうになるのをたまたま目撃して、おっさんを殴って止めた青年、清。後日、清と会ってエッチして恋に落ちる真琴だが、清はかなりドSな男で、かなりヒドイ扱いをするんやけど、後々ふたりは世間の目を無視して同棲し始める。とにかく大人のしがらみのなかで生きることを断固拒否する彼らとは逆に、それが出来なかった人たちが出てきます。そんなひとりが真琴のお姉さん由紀なのです。由紀は愛していた男がいたのに、両親の束縛のため挫折し、男と別れた過去がある。だから、お父さんが真琴に厳しくせずに、時代が変わったんだ、と語っているのに不満を抱いている。うん、わかるわかる、その不満。時代に迎合して主義も主張もコロコロ変えるおっさんども。真琴が自分の恋に真っしぐらに進んで行くのを見て、自分も過去に愛した男に会いに行くお姉さん。個人的にはこのあたりが一番ドラマチックで面白いと思った。もう一点面白いのが、清が家庭教師してる子のおかんとエッチして、金もらってるってとこ。このおかんがほんまに普通のおばはん。金もろてるとは言えよーこんなコッテリ熟女とエッチできるわー、てな感じで、彼らから見た大人世代はもう終わりきってるんですね。だから、そうは生きるまいと、ツンケン生きるんやけど、そんな彼らも特に創造的な生活をしてるわけじゃないから、気づかぬうちに金に振り回されて堕落の道にはまり込んでしまい、そして、金によって助けられ…みたいな感じに展開する。前半のいろいろな人物の伏線が、最後の方でちゃんと回収されていって、一見ランダムにしか見えなかったバラバラの人物が、ぴったしストーリー構造に組み込まれてて、ナルホドーってなります。が、全体としては、ちょっと面白みに欠けるかなー。ガヤガヤしてはいるけど、あまりドラマティックなアクセントがないというか…。映像的にも、後期渚作品のケオティックな中に存在する詩的秩序みたいなのがなくて、ごちゃごちゃした状況を写実的に描いていくので、そういうのが好きな人には良いかも。けど個人的には映像にももう少しアクセントがほしいなと思った。そう考えると渚監督のこの次の作品、太陽の墓場はグッとアクセントが効いてる感じする。ただ本作エンディングは衝撃! えっ! そんな終わり方! えっ! 早戻ししてもっかい見てもーたわ。
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