ジャン=マルク・ヴァレ監督作。
アカデミー賞作品賞にノミネートされた傑作『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)等で知られ、2021年に58歳で急逝したカナダの俊英：ジャン=マルク・ヴァレ監督のキャリア初期作品です。
1960～80年代のカナダ・ケベック州を舞台に、保守的な家庭に生まれた５人兄弟の４男：ザックの幼少期～思春期～青年期までの日々を描いた青春ドラマで、カナダ映画ですがケベック州が舞台なので言語はフランス語です。
保守的で厳格な父親と過保護気味の母親のもと、男だらけの家庭で育った青年の苦悩と葛藤の機微にスポットライトを照らした作劇となっていて、同性愛者としての確固たるアイデンティティーに目覚めていく青年と“同性愛は心の病に過ぎない”と主張する保守的な父親との父子間の確執と理解までの過程を数十年という長い年月をかけて丹念に映し出していきます。
デヴィッド・ボウイ、ローリング・ストーンズ、ピンク・フロイドら60年代～70年代の定番ロックナンバーが青年の心境と共鳴しながら劇中を鮮やかに彩っていますし、現実と幻想が混濁したユニークな映像世界が物語に違和感なく溶け込んでいます。
