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シリア・モナムールのundoのレビュー・感想・評価

シリア・モナムール(2014年製作の映画)
4.0
彼らが望むこと。

2011年に始まり、今なお続くシリア騒乱。
その端緒となった民主化運動と弾圧の様子を克明に記録したドキュメンタリー。

オサーマ・モハンメド監督作品。
彼は、フランスに亡命したシリアの映画監督。
彼と、SNSで知り合ったクルド人女性、シマヴ。この2人の他に、シリアに生きる人々が撮影した多くの映像を組み合わせ、編集されることでこの映画は作られている。

人が持つ罪をすべて記録したかのような映像が冒頭から垂れ流される。
ただ自由を求める人々に対して加えられる非道な弾圧。尊厳を徹底的に奪う行為。無造作に転がる夥しい死体。これらはすべて現実。

オサーマとシマヴは共にシリアの現状を憂う2人だが、オサーマは身の危険を感じてシリアに戻らない自分に忸怩たるものを感じている。
シマヴはオサーマに代わり、様々なシリアの現実を映像に記録する。

いつ、死が訪れてもまったく不思議ではない日常の中で、積極的に撮影を続けるシマヴ。
時には拘束され、時には銃撃も受けながら。

彼女は子供たちのために学校を開く。
彼らが永くは生きられないことを悟りながらも、「心は自由でいていい」と教える。
彼女のこの崇高な魂はどこから来るのか。

オサーマは、そんな彼女に勇気づけられ、気力を取り戻す。そうして生まれたのがこの映画。
しかし、この映画が作られた後も、シリアという国が食い散らかされ続けていることを我々は知っている。

それでも、まずは知ってもらうことから始めなくてはいけない。微力ながら私もこれを書く。

明日も生きること。それだけが彼らの望み。
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