カツマ

バリー・リンドンのカツマのレビュー・感想・評価

バリー・リンドン(1975年製作の映画)
3.8
人生とは運命と言う名のレールに導かれる歴史の中の一コマに過ぎないのか。この物語は徒然草の一節、猛き者も遂には滅びぬ、という言葉をある男の人生になぞらえたかのような一大叙事詩だ。怒涛の3時間という大ボリュームだが、貴族へと成り上がっていく男の栄枯盛衰の人生は、それほどまでに重厚だった。
18世紀の英国貴族の豪華絢爛な日常風景を完全再現!スタンリー・キューブリックの狂気じみた完璧主義が貫かれ、宇宙開発のために作られたレンズを使用したことでも有名な作品だ。

18世紀のアイルランド。農家の息子バリーは父親を銃による決闘で失い、未亡人となった母に育てられた。そんなバリーの初恋の相手は魅惑的な従妹ノーラ。彼女はバリーを誘惑する傍ら、英国大尉のクインとの結婚を望んでいた。激しい嫉妬に駆られたバリーはクインに決闘を挑み、結果彼を撃ち殺してしまう。殺人を犯し警察に追われるバリーはダブリンへと逃亡するも、その途上追い剥ぎに全財産を奪われてしまう。
生きるためイングランドの軍隊に入隊したバリー。そこから彼の流転の人生が幕を開けたのだった。

この映画は2部構成になっていて、前半部はバリーが軍隊から成り上がっていく物語。対して後半は貴族へと成り上がったバリーの没落を描いている。人生には良いことも悪いこともある。ただ、このバリーという男はその加減が極端だったということだろう。何度かの銃での決闘がバリーの人生を暗転させ、暴発した銃弾が跳弾していくかのように、彼の人生も跳ね返りながらあらぬ方向へと抜けていく。
クラシックの調べに乗せて18世紀ヨーロッパの壮麗な風景と共に送る歴史巨編。時計仕掛けのオレンジとシャイニングという、キューブリックの代表作の合間に撮られた隠れた名品だ。
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