げんき

バリー・リンドンのげんきのレビュー・感想・評価

バリー・リンドン(1975年製作の映画)
3.2
186分という尺もあってか、満腹になる。
とにかく満腹になる映画。ただ、ピザやステーキもしくはバイキングとか、そういうんじゃない。フルコースを5周食べた感じ。

イングランドの植民地であるアイルランドの出自から、貴族へとのし上がる。常に全体を暗い雰囲気が覆いかぶさり、バリーが成功しているはずだけどどこか不穏な空気を感じる。『1789年分の年金をお支払いください』というラストからの、エピローグで『今はみなあの世』。フランス革命による貴族社会の終わりと、死ねば変わらないというメッセージ。それを踏まえて見ると、いかにもキューブリックらしく人物を部屋の中心に置き左右対称な画を作り出す手法が、荘厳な18世紀の建築美術で行われている。さらにそれを引きで撮ることで、人間がちっぽけに感じる。豪華なもので飾り立てられた中に生きる人間も、結局は死んでしまう無常なものなんだ、と。


始めは寄っておいてどんどん引いていくカメラ
18世紀の空気管を再現するために、蝋燭の灯りのみで行った室内撮影。影や背景の黒い部分が美しい。明るい部分と暗い部分のコントラスト。あとその境界のぼやけ具合も。人物が動かないシーンなんかは絵画のよう。『フェルメールみたい』
横一列に並んで歩み寄ってくるイングランド軍。あれは走ることで隊列の乱れに便乗して歩兵が逃げ出さないようにするために、敵軍近くまで歩かせるらしい。

軍服のきれいな色、赤も青も。
誰一人として決闘の前、闘争心溢れる顔をしていない。「あぁ、やっちまった。決闘したくねえよ」という具合。立会人の方がノリノリ。借金の支払いの時もそうだし、みんな素直で正直なんだよね。そこがジョークになってる。
長男と父親の喧嘩を、笑いながら見ている弟。悪い奴だなあ。
赤ん坊や動物がとても自然に生きている。それぞれ人物の表情や間も良い。

レディーリンドンはもちろんなんだけど、アイルランドを飛び出してから一夜を共にした女性役の人も綺麗。
げんき

げんき