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バリー・リンドンのRのレビュー・感想・評価

バリー・リンドン(1975年製作の映画)
5.0
久々の5回目。ほぼ全ての作品が最高傑作と呼ぶにふさわしい、世界最大の映画監督スタンリーキューブリックの、真の最高傑作はこれ! だと思う。こんな大胆な映画が他にありますか! まず、何より素晴らしいのが、映像! 全ショットが絵画! こんな美しいシネマトグラフィ見たことなし! 最高級! 18世紀ヨーロッパを舞台に、主人公バリーがアイルランドの平民からイングランドの貴族に昇りつめるまでを描いた前半と、そこから残酷で悲痛な運命に没落してゆく後半の2部構成のストーリー。本作最大の特徴が、毎シーン、ストーリーがどう展開していくか、先にナレーションや字幕でざっくり説明して、それをじっくり緻密に描き出していくって流れになってる点。やから、どうなんの?ワクワクみたいなサスペンス的な要素はまったくナシ。けど、ワンシーンワンシーンゆったりじっくり演出されてて、人の動きも非常にゆっくりなので、ほんとに絵画が動いてるように見え、その圧倒的な美しさに悠々と酔いしれる余裕があるのは、先にネタばらしてそれに沿って話を進めてくれるからなのでありましょう。それにしても、画面の中のありとあらゆるものが、ここまであからさまな潔癖さで制御された映像作品は他にないと思う。まるで偶然的要素が何ひとつないかのよう。そして、その感じはそのままバリーの運命にも当てはまる。いとこと純な初恋にときめいていたのに、金持ちの大尉に簡単になびいて取られてしまい、勢い彼と決闘したことで警察に追われる身になってアイルランドを発つも、金がないのでイングランドの傭兵になる。そこからひと展開あって、怪しい動きをしてる貴族のおっさんシュバリエ ド バリバリの屋敷にスパイとして送られるバリー。だが、自身も貴族の仲間入りを目論む彼は、バリバリ側に寝返り、偽の報告をし始める。やがて、彼は、バリバリと行動を共にする中で、リンドンという大金持ちの未亡人と出会い、結婚。まんまと貴族の仲間入りを果たす。という流れが、事前のナレーション効果と、感情的な俳優の演技を無生物を眺めるかのような無感情な視点でとらえる効果もあって、最初から潔癖に制御された運命にしたがって、操り人形のように動いていってるだけに見える。映画の中の全てがキューブリックの絶対的なコントロールに拘束されてる感じ。この感じが素晴らしいんですねー。ほんと、狂ってる笑 そして、忘れてならないもうひとつのとんでもない魅力が音楽。何度も流れるテーマ曲のすさまじいインパクトもさることながら、シューベルトのピアノ三重奏がヤバい。リンドン夫人と初めて出会うシーンの映像と音楽のケミストリー、心酔しすぎて、何度も見てしまいます。最高。で、後半は、悲惨なことがあれよあれよとスノーボール、けど見てるこっちの感情は全編ほとんど一定。ぼーぜんと見つめるのみ、ただただスゴイものに圧倒される驚嘆しかないのであります。全体的にコミカルかつ皮肉なユーモアが漂っているのも確かで、可笑しいシーンもたくさんあるんやけど、それすら笑えないくらい、バリーリンドン独特の世界に引き込まれてしまう。こんな経験ができる映画は他には絶対にあり得ない。唯一無二。ほんで、また最後の字幕がね、最高だね。一体、人間の営みって何なんだろうか。みんなどうせ死ぬんだよ。社会的にどんな高い位置にいたとしても、死は平等にやってくるし、死ぬときは何も持っていけない。肉体すら持っていけない。自分を自分として成り立たせ機能させてきたもの、魂?エネルギー?生命?それのみだ。しかも死んだあと、それがどうなるかなんて誰も分からない。ひとつ確実なのは、自分が心を砕いてきた表層的なモノ全てが無意味なものに転じ、あなたを裏切るだ。個人と社会。その関係の醜い正体をむき出しにしてしまったあとで、キューブリックは沈黙する。現代においても問題はまったく変わっていない。さて、我々は一回きりの人生を、何のために、どう生きるのか。永遠に続くものなど何もないなかで。重厚なストリングスにのせて、そんな問いを我々に突きつけて終わるバリーリンドン。最高!!! 大大大傑作!!! みんなでつけぼくろを流行らせましょう!!! そして、ベストムービー変更!
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