いろどり

美しい星のいろどりのレビュー・感想・評価

美しい星(2017年製作の映画)
3.5
三島由紀夫原作ということで鑑賞。三島由紀夫は宇宙人小説も書いていたとは。これはリリー・フランキーと橋本愛の変テコな動きが目につく奇怪な宇宙人モノで正直わけわからない。コメディと捉えればいいのか、でも三島由紀夫原作だし、というモヤモヤを強く残す消化不良映画だった。


ということで原作を読んでみた。

米ソ冷戦時の核戦争の恐怖による終末論を背景に、地球の外からの視点で地球人類の状況を大局的に観察し、人類の根源を問うというのが原作だった(三島由紀夫は円盤観測の会合に参加するほどUFOに本気🛸)。おおむね原作に沿っているものの、時代を現代にしたことでだいぶ作品の雰囲気が変わってしまった。問題点を地球温暖化にシフトし、亀梨和也演じる息子、一雄をウーバー配達員でうだつの上がらないフリーターにしたり、リリー・フランキーが奇妙な動きを何度もしたり(不要!)だいぶ軽い印象になった。そのことがメッセージ性を薄め、作品のジャンルを曖昧にし、観るものに大きな混乱を与えている。

政治や思想を風刺的に三島由紀夫の芸術世界に落とし込み、現実と反現実を融合させた原作の映画化の難しさを実感した。

とはいえリリー・フランキーも橋本愛も、映画を観てから小説を読んだというのもあるけどピッタリの配役だったと思う。亀梨和也も原作の雰囲気には合わないけど、今作では何ともいえない哀愁が漂っていて、新たな魅力を発見できた。音楽やカルト風な雰囲気は良く、リリー・フランキーの変な動きはクセになりそう。なんだかんだ言ってこれは時々、観たくなる映画かもしれない。
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