エミさん

美しい星のエミさんのネタバレレビュー・内容・結末

美しい星(2017年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

突如、宇宙人として目覚めた平凡な家族が地球を巻き込んで起こす悲劇的な喜劇。
原作は1962年に出版された三島由紀夫の長編SF小説。原作を元に、甲斐聖太郎氏と共に吉田大八監督が脚本を手がけている。核戦争の冷戦時代を憂いて執筆された当時の内容を、大胆な現代風に脚色し、見事に家族の特色や現代の抱える社会問題などといった特色を交えて体現している。

火星人という自己認識を持つ気象予報士の父、大杉重一郎。金星人という自己認識を持つ美し過ぎる大学生の長女、暁子。水星人という自己認識を持つ野心家でフリーターの長男、一雄。平凡な毎日にどこか空虚さを感じている地球人の母、伊余子。
最初に『覚醒』した重一郎の言動に影響され、それぞれの家族にも変化が現れ、覚醒に目覚めた家族全員が行動を起こしていく。自分のために。家族のために。そして地球のために。。。

執筆当時は、核戦争へのアイロニーという暗喩が込められていただろうが、技術が進歩し、より高度化・多様性になった現代に於いては、驚異の対象は核の恐怖だけではなくなってきている。
地球の存亡について、地球人を差し置いて、宇宙人が話し合っている事がこの映画でのメインであろう。役者の真に迫った演技は圧巻であり、「地球人」として観ている私達は、先行きがどうなるのか、地球の未来がかかっているこの言論戦に釘付けになってしまうのである。

平凡に過ぎていく毎日は決して当たり前に『平凡』なのではなく、自身の『覚醒』次第で、何とでも変わっていく可能性を持って私たちは毎日を選択して生きているということが、この映画の根底にはあると思えた。