意味不明な話を、上手なキャスティングで、うまくまとめた。主役は、これは、リリー・フランキーじゃないとだめだった。火星人であり、「太陽系連合」とか言い出しちゃったりする一方で、若い姉ちゃんと浮気の濡れ場もする。これは西田敏行では絶対に無理。佐藤浩市でもだめだ。役所広司ならまだいけるのかな、いや、コメディによりすぎるかな。また、娘役は、橋本愛じゃないと、一気に画が安っぽくなっていたであろう。綾瀬はるかでもだめだし、逆に無名の女優でもだめだった。ほんとうに絶妙に人を選んだ。(亀梨や中嶋朋子は、違う人でも成り立ったかもしれない。)
また、リアルと非リアルの境目のバランスが、とっても上手であった。ちょっとでも足を踏み外したら、「ギャラクシー街道」みたいなことになってしまったかもしれないところ、くすくす笑わせずに、でも下手に小難しくシリアスにもせずに、エンタメと観念的パフォーマンスを同時に感じさせ、2時間があっという間だった。また、何と言っても、BGMが、ずいぶん巧みだった。クラシックになったり、オルタナティブになったり、ダンスになったり。これが、渡邊琢磨という人ひとりだけでやっているらしい。天才なのではないだろうか。
また、細部のエキストラまで、配置や演技や動きを、きちんと統制して、作りたい画にこだわっている。例えば、娘が大学の広研の男にミスコンに誘われるシーンや、お母さんが「美しい水」のセミナーをしているときの、携帯電話の渡し方。リリー・フランキーが局員たちに責められる場面は、1人VS大勢に大胆に配置した、人の置き方を、大事な演出として、意識をしているようだ。別に奇抜なことをしてるわけじゃなくて、「そういうシーンではそうするよね」ということが、完璧にできている。
でも、ところどころ、きちんと攻めてたな。佐々木蔵之介の、惑星みたいにくるくる回り続けてしゃべるところとか、あと、牛!