真田ピロシキ

さよなら、ぼくのモンスターの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.4
難しい。もっと分かりやすいLGBT映画だと思っていたので困惑して中盤で少し意識が離れていた。比喩が多い本作で自分が受け取った主題は父親殺し。主人公のオスカーには幼い時からゲイの自覚があったが、学校でゲイの生徒が暴行を受けた恐怖が植え付けられていて、加えて父が男らしさを鼻にかけたマッチョである事がオスカーの心を縛っていた。成長するに従って父を段々軽蔑するようになっても好きだった幼少時の思い出と自分を捨てて出て行った母への反発とで切り捨てられない。父への依存から脱却して自分の足で歩みを進めるまでの物語。話し相手のハムスターを精神から解放したのも、唯一の出口として目指していたNYのメイクアップスクールには行けなかったが別の学校へ進めたのも繋がっている。バイト先のバイセクシャル青年や偽装彼女との関係が話の肝だと思い込んでいたのが間違いだった。父との関係こそメインと思えば原題も含めてタイトルにも納得が行く。

演出的にも作り物めいていない風景美と色彩豊かな幻惑性が混ざっていて音楽も合わせて面白い。塚本晋也監督の『鉄男』的な趣も一部で感じた。若手インディペンデント映像作家に求めるような点は外していない。その外してなさがカナダのインディーズ映画としてはやや予定調和にも思えたのだけどそんな粗探しをしてもつまらんので素直にステファン・ダン監督の今後に期待しましょう。