鋼鉄隊長

ザ・プレデターの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

ザ・プレデター(2018年製作の映画)
4.0
TOHOシネマズ梅田にて鑑賞。

【あらすじ】
傭兵のクイン・マッケナは、任務中に宇宙船の墜落を目撃する。その船から姿を見せた異星人(プレデター)との戦闘に勝利したマッケナは、宇宙人のマスクを証拠代わりに回収するが…。

 上映開始数秒で姿を見せるプレデター。主だったサイドストーリーを用意せず、異星人との戦いに専念する物語。まさに僕好みの愚直なモンスター映画!プレデターが子供に召喚されるのもアホっぽくて良い!! さらに凄腕スナイパーの主人公が率いるのは、『独立愚連隊』(1959)も手に負えないイカれた軍団「ルーニーズ」。彼らの上官は児玉大隊長(三船敏郎)しか務まらないだろう。しかも彼らは一騎当千の兵。会敵した際の手際の良さには関心する。極限状態で自身の頭を打ちぬいた過去を持つなど皆様々なキズ(PTSD)を抱えているのには、優秀すぎるが故の悲劇が垣間見える。そして彼らと対決するプレデターは、1作目で殺された監督の私怨が入ってるのでは?と思うほど悪かった。元々僕はプレデターに対して、武士道の名を語る辻斬り蛮人みたいな印象があったので今回は清々しくて良かった。あの種族にとって武士道精神は着飾る武装の一つ。なので武人の仮面を終始外したアルティメット・プレデターには、醜い野獣の心だけが宿っていた。正体見たりゲス野郎。気持ち良い悪役っぷりである。猟犬にあっさりと裏切られる辺りも人望の無いワルの生き様を感じた。
 しかしながら、一緒に観に行ったプレデター好きの友人は冴えない顔をしていた。彼曰く、この作品でロマンが失われたそうだ。「今回のプレデターには戦闘民族の誇りが欠落している。地球に来た目的は(実質的な)地球侵略になったし、装備も無い。対する人類も単なる愉快な集団で、特に策も無くゴリ押しで勝利する。強者同士の決闘の美学は一体何処に行ったのか」(意訳)。言われて目から鱗が落ちた。好きな作品は違えど熱いモンスター愛を胸に秘める仲間としては、彼の言葉は深く胸に刺さる。格上の怪物に対して人類が知恵を振り絞って戦ってこそ、怪獣映画は面白い。思えば今回の作品には、知恵比べの要素はほぼ無かった。これに気付かないとは、僕は怪獣好きとして失格だ。とても恥ずかしく思う。
 だが、ごめん。出来が悪いとわかっていても、どうしても酷評する気になれない。もうこの作品に一目惚れしてしまったのだ。近年、真面目路線の怪獣映画が増える中で、変わることなく輝き続ける陽気なノリ。作品を包み込むカラッとした笑いが心地よい。それにあの幕切れの仕方! 取っ散らかしたまま終わるあの感じに、僕は『GODZILLA』(1998)を思い出した。そんな大風呂敷を広げて大丈夫なのか? 潔いほどに無計画なラスト(そのまま続けたら流石に引くが…)には否が応でも心踊らされてしまう。滅びの美学とも言える男たちの散り様に悲しさを感じた瞬間、僕はこのポンコツ映画に恋をしてしまったと知った。
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